「会員の詩」の頁です。
関西詩人協会自選詩集(第10集)から
掲載させていただきます。
紀ノ国屋 千
「イザベルの花」
ロシア貴族の末裔 凍りつく白い肌に秘められた愛を閉じて 砂のかなたに 蒼く拡がる水と カサブランカ 白い尊厳 おまえを支える大地こそ愛を茎につたえ この日もイザベルの夢を宿して 燃える 2001年秋・カサブランカにて
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所属:全電通詩人集団詩誌「全電通詩人」、「竹の花文芸」
著書:詩集『かぜの物語』
武西良和
「白いチョウの行方」
早朝からの仕事を終え 低く 露の降りた柿の葉から チョウの影が畑中を動いて 蜘蛛の糸に蝉の声が 新しく紡ぎ出された蜘蛛の糸が一本 チョウは影を探して 裂け目が閉じられ 〈初期形〉二〇一九年9月8日(日)午前8時45分 高畑にて
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所属:日本詩人クラブ、日本現代詩人会、個人誌「ぽとり」
著書:詩集『鍬に錆』、『きのかわ』
阿部由子
「遠ざかる影」
六甲の連なる山並みに厚く垂れ込む雲を切り裂いて 夕暮れる街 なおも波動し撹拌する意識に抗い いまここにさまよう意識の屈曲率 留まろうとして今の時間にしがみつくのに 孤立する眩い意識の無限空間 わたしは知っている
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所属:「銀河詩手帖」、兵庫県現代詩協会
著書:詩集『水先案内人』