「会員の詩」の頁です。
関西詩人協会自選詩集(第9集)から
掲載させていただきます。
かしはらさとる
「白いカバン」
|
著書:詩集『島おへんろ』『増補版 島おへんろ』
宮崎陽子
「本」
虹の橋を かけ上って 雲をつかみたいと思った お菓子の国で チョコレートをたらふく 食べたいと思った フリフリのドレスで 着飾って 踊りたいと思った 扉の向こうの 草原を駆け抜け いつしか旅をしていた それらは清々しく 記憶の奥深くへと 消えていったはずのものたち 幾つもの季節がめぐって あの時 あの瞬間の思いが再び蘇る 何層にも重なり合い 今 慎み深く 穏やかに 生きていることを 愛おしくさせてくれるのだ
|
所属:万寿詩の会
吉川悦子
「ふで箱」
小学校に入学する時 初めて持った ふで箱 まっさらな鉛筆と消しゴムが入っていた ふで箱は学年が上がるにつれて変わっていった セルロイド カンペン ビニル製 チャックのついた布製 中身もどんどん増えていった そして教師になって 赤ペンが加わった これらのふで箱を使って 文字を書き 数字を書いて 生きてきた 退職した今 ふで箱の中には ちいさな鉛筆とけしゴムだけが残った でもこれは 今も 私の知性を存続させてくれている証となるもの これからこそ 頼むぞ
|
所属:万寿詩の会