「会員の詩」の頁です。

関西詩人協会自選詩集(第7集)から
掲載させていただきます。

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 関 中子



「がれきのようなことばを」



がれきのようなことばをたくさんはきだそう

そうすればこころは日々に近づくだろう
 

海におおわれていた

縄文の

あの木道は

土に埋もれ三千年をねむった

衣替えの日をむかえたように陽をあびたある日ののち

歴史博物館の奥にしまわれた
 

新しいことばがある古さ

その時間に目を覚まし

次の時間に昼寝する

それらのものは熱烈な想いをねむりつづけた

認められない時代もことばでいつづけた

人のことばをもたないものが守りつづけた

人の想い
 

  山のことばや海のはてのことばが

  いっせいにはためく

  人よ ことばにしてみよ それは美か
 

  空をかくはんし地をゆすり 造形を殴打し憤怒の

  古いや新しいが噴出する

  人の作った噴火口も

  永遠の炎の様相をお披露目し

  現在へ流れこむ過去とともに未来へ走りさる過去は

  層となって褶曲し 噴火口に

  つながれるところへ飛ぶ
 

風よ

こころのすき間がすこしおだやかな 空間になるだろう

海や水や空の性格がことばに とまる枝をあらわすだろう
 

わたしがここにいることを

あそこでなくここにいる必然を

わたしは語れるに違いない

 

 

所属:日本詩人クラブ 日本現代詩人会 PO
著書:詩集『しじみ蝶のいる日々』『空の底を歩く人』『三月の扉』




畑中暁来雄



「阪急電車「小林(おばやし)駅」」

 

宝塚市の「小林駅」に降りてみた

中学時代 通学の通過点

ボクのタイプの少女が乗ってくる駅だった

 

彼女は一人で乗ってくるときも

女友達と二人で乗ってくるときも

楚々として 美しかった

髪の毛は短くカット

星の輝きのような眼もとの麗しさ

白樺のように白い脚

清純な丸い唇

 

少女は一つ違いの下級生だったが

ボクは声をかけられなかった

校庭を走る体操着のゼッケンで

彼女の名前を知った

 

Y・Mさん

 

ボクはその名前を胸に

毎晩布団の中で

輾転反側としていた

心が熱い アソコも熱い 苦しい毎日

でも彼女とは進学した高校が異なった

 

あれから三十五年

「阪急電車」という映画を観て

「小林駅」に降りてみた

近くをブラブラ歩いたあと

昼食にスパゲッティ店に入った

カルボナーラを食べた

Y・Mさんの面影が浮かんだ

窓の外に黄色いクロッカスが咲いていた

 

所属:詩人会議 軸 新興吟詠会
著書:詩集『資本主義万歳』『青島黄昏慕情』



風呂井まゆみ



「きょうだい」

 

 

帰り途(みち)

環状線の電車のなか

姉と兄と私が

それぞれの手をだす

三人の両手

誰も父の手を思い出せない

骨格は兄が似ているので

兄の手が似ているのだろう

 

母の手はみな覚えていて

でも誰もが似ていない

晩年 車のドアに手を挟まれ

二本の指が真直ぐ伸びない

真似して笑う

 

三人の両手

年をとっていた

 

祭日に混雑する

JR大阪駅中央改札

 

「さようなら」

別れる時はさりげなく

以前からの約束ごと

それぞれが違う方向に

手を振りながら

喪服姿のきょうだいが

消えていく



所属:大阪文学学校
著書:詩集『私は私の麦を守っている』







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