「会員の詩」の頁です。

関西詩人協会自選詩集(第7集)から
掲載させていただきます。

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左子真由美

「わたしたちは風」


わたしたちは風
いまここに吹いている
ひとふしのメロディ
まぎれもなく
今生きている風
憂鬱な日々のあとに
長い夜のあとに
低く流れる歌声
わたしたちは時代の子ども
どんな勲章も持っていないけど
口ずさむことができる
わたしたちは詩人
かなしみの水さしを
よろこびの鳥に
きっと変えることができるだろう
わたしたちは時代の子ども
わたしたちは名のない詩人
わたしたちは風
懐かしい南風
愛の在り処を知っている
放縦な風

所属団体  関西詩人協会 
所属詩誌 『PO』


市原礼子

「モンステラ」

 

大きくてやわらかな掌で

満々と深緑をためた

モンステラ

まあるく満ち足りたと思う間もなく

指の間からこぼれ落ちていく

 

はじめから足りていたのに

ぬけ落ちていくものを見るのにいそがしく

ごめんなさい

無垢な微笑みに気がつかなくて

ほんとうにごめんなさい

 

内側から

いつのまにか穴があき

深いところまで葉縁はきれこみ

とおくに行ってしまったのね

もうこれ以上は無理なところまで

 

それでもモンステラの葉は

子をおもう母の心を忘れることができなくて

ごめんね  ごめんね

レースのカーテンをゆらしながら

やさしく緑の風をおくってくる

所属団体  関西詩人協会、日本詩人クラブ 
所属詩誌 『RIVIERE』『柵』『瑠璃杯』
主な著書 『愛の谷』





清水一郎

「サクラ狂詩曲」

 

春 一番に咲いて

ありったけの色香

惜しげなく振る舞う

サクラよ

気っ風の良さ

眩しすぎるぜ

 

身木を抱き

頬を寄せれば

脈々と息づく

サクラの精に

突きあげられ

手も無く感染するなんて

 

それは ちと

さびしすぎるぜ

開き直って ど根性

見せてやらんかい

粋がってる

昭和一桁の狂いうた

 

一番に咲いて

サクラよ もう散るか

ひらひら ひらひら

真っ只中で

涙ぽろぼろ

呆けて立ちつくす

所属団体  関西詩人協会 
所属詩誌 『軸』
主な著書 『ちょっと見えてきた』『糸とりうた』





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