「会員の詩」の頁です。
関西詩人協会自選詩集(第7集)から
掲載させていただきます。
藤谷惠一郎
「死者と春」 死者の胸に 小鳥が 一粒の種子を落とす
春 芽吹き 子馬の誕生のように 花を咲かせる 生命の宙の ひとつの確かなものとして
死者は ようやく大地に帰る |
所属団体 日本現代詩人会、日本詩人クラブ
所属詩誌 「PO」
著書 『風の船』『喪失の宙』『風を孕まず 風となり』
牧田久未
「消す男」 |
所属団体 日本ペンクラブ、日本現代詩人会、日本詩人クラブ、関西詩人協会
所属詩誌「ラビーン」
著書『林檎の記憶』『うそ時計』『13月・目撃』他
今井 豊
「もう 笑うしかない」
悲しいとき 辛いとき 地平線を見つめるように 表情の変化は 風のささやきと 波のゆらぎにまかせている ずっと遠くを さらに遠くを見つめているだけだ
笑いを失ってから 長い時の陳間に 息を止めては吐き出し 死ぬかもと 責めるものを見つけては 生きていることを知る
笑いを失うとは 人間をやめること 人間でなくなること 人間をあきらめること
ちっぽけな自分だけの世界でさえ 人間でありたいのだ
明日の命もわからない 戦火のなかで 子供が笑っている
もう 笑うしかない 人間であり続けるには 人間として生きるなら 顔だけでも もう 笑うしかない |
所属団体 関西詩人協会
所属詩誌 「総合詩誌PO」
著書『今井豊詩集 一枚の絵』
上嵩小百合
「わたしのあいするひとたち」
わたしのあいするひとたちは きょうもはるかくものうえ そらにぽっかりあながあいた ちきゅうというなのほしくらい ぼっかりあいたそらのした あなだらけえのほしのほし ほしのほしのかせんのじきで だいのじをしてねっころがった そこにあるものみえるもの みどりのみどりとそらのそら ひっくりかえってごろんとすれば そらいっぱいにほしのほし あなだらけえにさよならすれば ほしいっぱいのそらのそら わたしのあいするひとたちに やがてほしがそそぐだろう いっぱいゆめのむねのなか わたしはきょうもおいのりする あしたもげんきにすごせるようにと きょうもおいのりするわたし |
所属団体 日本詩人クラブ 関西詩人協会