関西詩人協会会報第24号

2002年1月1日
発行者 杉山平一
関西詩人協会
目次
第8回関西詩人協会総会

総会の講演要旨
第9回 春の詩画展 
第6回文学館ツアーご案内
芸文協フォーラム
司馬遼太郎記念館見学記
西日本ゼミナール・大阪
インターネット更新状況
第12回富田砕花賞を山本美代子氏受賞
会員の活動
入会  退会者
会員の詩書

第8回関西詩人協会総会

多彩な行事の成果を更に推進

 2001年11月11日(日)の午後は秋晴れ。大阪南森町の東興ホテルで、第8回総会が行われた。80余名の会員と一般参会者で会場は満席状態となった。また、この一年間に刊行された約二十点余の詩集や著書が展示された。
 第一部の司会・進行役は金堀則夫氏。始めにこの一年に亡くなられた会員(内海康子・多気正一・西谷民五郎・森口武雄・岡井暁・植嶋亨介氏)に黙祷を捧げた。
 開会挨拶は日高てる子氏、テロ事件、戦争に関連して「物に方向性をつけるのは人間である。言葉に方向性をつけるのは物を書いている人の役割である。詩人である我々は、言葉で何かをしなければならない。」話された。
 杉山平一代表は「この会がこんなに続くとは思っていなかった。委員の方による運営が良いのである。二十一世紀は次々と恐ろしいことが起こり、遂に同時多発テロと言われるものが出てきた。情報は沢山あるが注意していないと一方的なものに成りがちである。民族・宗教の違いを否定して『みんな一緒に』といういわゆるグローバル化による混乱人間自身による生態系の破壊。人は右、車は左と教えられるが、人間は本来左を通行しようとする癖がある事考えなければいけない。新聞の投書欄をみも、政治を批判しているのが沢山載っているが、実際選挙をしてみると反対の結果が出たりして、世論は両方で見なければいけない。一方的な情報に惑わされないようにしなければならないと述べられた。
   議事に入った。
 運営・事業報告を中岡淳一氏。自選詩集刊行報告を島田陽子氏。会報発行については志賀英夫氏。会計決算報告を横田英子氏。、会計監査報告を柴田忠彦氏。次年度事業計画案を一括して青木はるみ氏。次年度予算案を横田英子氏が報告して、質疑は一括して行われ、無事採択された。
 この後、新入会員の紹介を中岡淳一氏が行い各人着席の席で起立、拍手の形で行われた。
閉会の言葉は福中都生子氏が文学館の必要性と陳情状況。会報による情報の提供、会員の拡充、会費の納入状況について言及された。
  一旦休憩の後、第二部に入る
福田万里子氏の総合司会で、まず詩の朗読が行われた。対象は自選詩集と英訳詩集に参加された伊川明子、佐古祐二、ときめき屋正平、名古きよえ諸氏が自作詩を朗読した。

講師・青木はるみ氏の『詩の秘密』と題する約一時間の講演。
講演の要旨はこちらへ


 懇親会
 水口洋治氏の司会で、まず「会員詩集出版を祝って」津坂治男、下村和子、左古真由美諸氏が世話役となり二十名の各員が出版物を手に順次挨拶された。
 乾杯の音頭を志賀英夫氏、和やかに会食、懇談の和が各所にできた。またスピーチや歌、尺八の演奏なども出て団欒の時が過ぎた。
 閉会挨拶は原圭治氏。(文責・永井ますみ)
参加者
杉山平一 青木はるみ 石井習 犬塚昭夫 井上庚 岩本健 遠藤カズエ 奥田博之 阿形容子 奥村和子 大西宏典 猪谷美和子 加納由将 椛島豊 川中實人 神田さよ 猫西一也 香山雅代 梶谷忠大 中岡淳一 永井ますみ 西尾久弥 大西久代 左子真由美 佐古祐二 志賀英夫 志田静枝 下村和子 島田洋子 住田文子 島秀夫 立山澄夫 外村文象 玉田五郎 久永元利 原圭治 橋爪さち子 福田万里子 堀諭 本郷博英 福中都生子 日野友子 板東さとみ 福田恵美子 三島祐一 水口洋治 南村長治 毛利真佐樹 村上久雄 森ちふく 三浦玲子 水谷なりこ 屋根正彦 吉本弘 横田英子 日高てる 藤原節子 森井克子 中尾彰秀 根来真知子 森田魚山 もりたひらく 五島多麻 金堀則夫 小磯ミハ子 関はるみ おれんじゆう 北村こう 伊川明子 柴田忠彦 佐藤勝太 西喜久子 蔭山辰子 河井洋 斉藤明典 岩井洋 岩国正次 岩国智恵子 生駒三千雄 名古きよえ 大賀二郎 津坂治男諸氏84名(順不同)
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総会の講演要旨
『詩の秘密』   青木はるみ

 詩の感動はいつでもある訳ではないし、それがすぐ詩になるというものでもないけれど、不意に何かが訪れて来る時の不思議な機微をキャッチできれば、それこそが秘密といえるでしょう。
 そもそも秘密というのは隠して知らせないことなので、こういう場で喋るのは変ですが「詩の・・・」ということで奥の手、秘術という響きがするでしょうか。
 最近の映画、宮崎駿の「千と千尋の神隠し」は大人気の理由を、かなり克明に分析できます。つまり観客に臨場感を与える秘密。「人の実際の網膜で見たもの」と、「脳で知覚したもの」とは違うので、宮崎氏は「写真に撮ってそれを絵にするのではなく、頭に入っているイメージで描け」と弟子達に指導するそうです。上層にある、真っ直ぐな筈の手すりが弓なりに湾曲していると、観客はその場に立って上層を見上げているような錯覚を持つのです。現実を凝視した上で虚構を施す必要がある点では詩の秘密に通い合うと思います。りんごの落下する動きを、あえて重力に逆らう動きにすることで、アニメの生きものに生命を与える方法はじつに興味深いのです。
 題名の付けかたにも工夫が要るでしょう。鬱蒼たる森を書いた絵を観たことがあります。その題は「くもの巣」でした。詩の題も、このように作品の内容を暗示するような魅力ある言葉を選びたいですね。宗左近氏の「鳴いた蝉の脱け殻は美しい」という詩の題を「恋」とすることで、イメージがぐっと深まります。
 小野十三郎氏も「モノ又はモノの陰影を仲立ちにしなければイメージはうまく結べない」と言っておられます。想いの強さだけ言っも駄目なんですね
 詩に成る寸前にこそ、詩の秘密が隠れていると考えて書いたエッセイが、本日お配りした「ちょっとズレてみる」ですので、ごらんください。たとえば柳の枝をコップに刺しておくと、根に近かった側からは根が生えてきて、天に近かった所からは葉っぱが出てくる不思議を感じたことがあります。和服の染め見本から「恋待ち蕾」という名を覚え、柳のイメージと合体させて詩ができたことがありました。
 西脇順三郎の「詩を作るときは、なるべく遠い関係にある二つの現実をぶつけ合わせて、その摩擦によっておこる光線のようなものを作るのである」は非常に魅力ある方法ではないでしょうか。
 テキストの私作「半夏生」は異界との交信がテーマ。詩には謎が残る。秘密が残ってもいいと私は考えています。
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第9回 春の詩画展      
 こぞって気軽にご参加下さい

日時  3月2日(土)から8日の間
会場  西梅田地下画廊(地下鉄西梅田駅西側通路)
作品搬入 3月1日午後4時からです、設営についても可能な限りご協力下さい。
参加費  500円(色紙掛けの額は実費の千円です)
京阪神地域外からの出品は、色紙のみ郵送で受け付けます。参加ご希望の方は2月17日までに原圭治委員まで申し込んで下さい。

第6回文学館ツアーご案内

行き先 「源氏ミュージアム」
日 時 3月17日(日)午前十時 京阪淀屋橋中央改札口前に集合。(十時十五分発特急み乗車。集合に遅れた場合、十五分ごとに特急が出ます。直接ミュージアムにおいで下さい)昼食は平等院正門前の店で(各自負担)
世界遺産の平等院、宇治上神社、大吉山万葉歌碑を巡り、三時頃現地解散。運賃は片道400円。観覧料は500円参加申し込みは事務局の福中委員まで。
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「芸文協フォーラム」
 京都市芸文協では創立20周年を記念して「芸文協フォーラム」を京都芸術センターで11月17日に開催した。

 フォーラムの共通テーマは「伝統と創造」で、第一回は文芸部門の詩分野が受け持ち、担当として薬師川が構成した。
第一部は「異分野交流」のパフォーマンスで、関西詩人協会から青木はるみ氏を招いて詩集『火薬』の中から「水系」を朗読し、それに音楽は中原昭哉氏の作曲による電子音楽に乗せて藤蔭流二世静枝氏が振り付け、演舞するという三種類の異分野芸術の組み合わせによる新しい世界の創造を目指した。
第二部は「芸術は何処まで現代を表現できるかーー現代詩の場合」と題してシンポジウムを開いた。パネラーは北海道大学名誉教授本田錦一郎氏、十七世紀,、イギリス形而上詩からT・Sエリオットまで幅広い研究者として知られている。同志社大学教授中井晨氏、T・Sエリオットと日本現代詩との関わりを追求している研究者。それに現代詩人として青木はるみ氏を加えた三名に薬師川が司会者として加わって進められた。
 テキストとして、安西冬衛の「春」、村野四郎の「鹿」、森川義信「勾配」を取り上げ、三人のパネラーがそれぞれの立場からテキストを自由に読み解き、論じ合うという形で進め、間に、フロアーからの質問を受け、パネラーとの交流行いながら活発な二時間が終った。(文責・薬師川虹一)

司馬遼太郎記念館見学記
            「京都文学館設立を求める会」と交流

 12月2日(日)午後1時から、東大阪市小坂の住宅地にある司馬邸に隣接する記念館を見学した。記念館は去る11月1日に開設された。
 関西詩人協会から福中都生子、原圭治、下村和子、三島祐一、ときめき屋正平、岩井洋、河本澄一、柴田忠彦の八名が参加。京都の会からは西氏ほか六名が参加された。
 門を入ると司馬氏が好んだ生前そのままの雑木林風の庭を通り、その景観を見ながら執筆していた書斎をガラス戸越しに見て、敷地内の記念館へ向かう。愛用の机に筆記具やルーペ等が、書架には未完の「街道をゆくー濃尾参州記」の参考文献がそのまま置かれている。
 記念館は安藤忠雄氏の設計、ガラス面からの採光がよく、地下一階から地上二階まで吹き抜けの空間が展示室である。地下一階には高さ11メートルの南北壁面に書棚が作られ、蔵書2万点が置かれているのが圧巻。
 一行は上村洋行館長の解説を受けながら、ハイビジョン映像のビデオや、150余席のホールで、NHKの映像を編集した記録を鑑賞した。
 見学後庭内の休息スペースで、文学館の設立の運動についてどのように世論を形成してゆくか等について話が弾んだ。(文責・柴田忠彦)
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西日本ゼミナール・大阪
         日本現代詩人会主催
               はこちらへ

インターネット更新状況
平成12年
10月5日会報19号・言葉の花火。
10月9日第五回詩の色紙展。
11月1日西田純氏・志田静枝氏の作品。
11月21日総会の記事。
11月25日左子真由美氏と中岡淳一氏の作品。
平成13年
1月2日奥田博之・蔭山辰子氏作品。
1月13日会報20号と英訳詩集言葉の花火。
2月9日詩画展。
3月1日高丸もと子・大賀二郎氏作品。
3月22日吉備路文学館訪問記事。
4月8日会報21号。
5月1日三島祐一・吉田薫氏作品。
5月15日薬師川虹一氏翻訳によるモンゴルの詩人Sハッダー氏の作品。
6月3日杉山平一代表の作品と写真。
7月2日村田辰夫・永井ますみ作品。
7月2日会報22号。
9月1日高明浅太・森ちふく氏作品。
9月4日第七回詩画展、入会規約。
9月24日薬師川虹一氏の訳によるマリエット氏の作品「海よ」。
10月13日現在のカウンター数 7922

    DZM03624@nifty.ne.jp
第12回富田砕花賞を山本美代子氏受賞
受賞詩集「西洋梨そのほか」
11月10日芦屋市民センターで贈呈式が行われた。
詩集は散文詩集。生の在りようの愛しさを、引き締まった文体で確かに伝える、みずみずしい詩集と高く評価された。
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会員の活動
杉山平一氏
  文部科学大臣表彰「地球文化功労者表彰」を受賞。
12月1日の午後、大阪教育大学天王寺キャンパス中央館で開催された、四季派学会・秋季大会で「昭和十年代の詩と交流」と題し講演。
青木はるみ氏
  10月20日、大垣スイトピァセンターで「詩と生きる喜び」と題し講演。
有馬 敲たかし氏
  12月22日から29日の間、イラクのバクダードで開催されるアラブ世界の最大の詩祭「アルマルビッド」にイラク政府から招聘を受け参加交流。
神田さよ氏
  10月28日神戸女子大学教育センターで開催された現代詩文庫開設記念講演会で作品を朗読。
佐相憲一氏
  11月18日、詩を朗読する詩人の会「風」にゲスト出演。
島田陽子氏
  10月14日〜11月25日、土屋文明文学館で開催された現代少年少女詩・童謡展に作品出展。
渋谷魚彦氏
  神戸ナビール文学賞の奨励賞を受賞
志賀英夫氏
  「柵」復刊15周年記念号通巻180号を11月20日に発行。
谷口 謙氏
  11月11日ふれあいの祭典ー詩のフェスタひょうごの会長賞を受賞。
吉田 薫氏
  同上 兵庫県詩人協会賞を受賞。「詩人会議」年間最優秀賞を受賞。
名古きよえ氏
  オーストリアの芸術友好会のココシュカ賞受賞
西 喜久子氏
  足利学校文芸賞に作品「母のおせち料理」入選。
日高てる氏
  11月25日大和高田市葛城コミュニティセンターで民族音楽と語り&詩の朗読の会を開催。
福中都生子氏
  11月2日金沢のスカイホテルで開かれた「日本海文学大賞」授賞式に選考委員として出席。
福田万里子氏
  12月10日川口総合文化センターで作詩「四季に」が、三善晃作曲で混声合唱組曲として演奏。
水口洋治氏
  10月27日朝日新聞に作品「希望」を発表。
入会  退会者
入会者
佐藤勝太氏
鍋田知見氏
滴     氏

退会者
廣田仁吉氏
大塚子悠氏
直鳥順子氏
荻野 央氏
哀悼


小野菊恵氏
おめでとうございます 会員の詩書目次へ戻る
ゆきなかすみお詩集 ねこまたぎ 竹の花文芸出版
進  一男詩集 せせらぎ 本多企画
正岡洋夫詩集 海辺の私を呼び 編集工房ノア
島  秀生編著 ネットの中の詩人たち 花神社
津坂治男詩集 新町小学校 稽古社
西尾久彌詩集 時空の旅人 竹林館
谷口  謙詩集 半月 出版研
根来真知子詩集 たずね猫 澪標
姨島とし子詩集 この手の記憶 編集工房ノア
柴田忠彦詩集 クリーンスタッフ ひまわり書房
おしだとしこ詩集 不安の所在 ひまわり書房
原  圭治詩集 海へ 抒情 詩画工房
有馬 敲短詩選 中国現代詩名家集 銀河出版社
下村和子詩集 隠国青風 砂子屋書房
香山雅代詩集 風韻 湯川書房
もりたひらく詩集 時を喰らった怪獣 竹林館

あとがき
輝かしい新年を迎え、皆々様のご多幸をお祈りします。目次へ戻る
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