関西詩人協会会報第11号

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平成10(1998)年2月1日 発行者 杉山平一


水平線

関西詩人協会 ホームページ

目 次


  1. 盛りだくさんの報告や意見交換

  2. 自選詩集参加規定

  3. 関西詩人協会賞の設定

  4. 文学館ツアーを開催

  5. 詩の色紙展と募集要領

  6. 大阪文学センターはいま

  7. 哀 悼

  8. 「女性artistは語る」

  9. 蜻蛉忌の催し

  10. 高校生のための詩の教室

  11. 詩の教室

  12. 会員の活動

  13. 三つの文学館と関西文学館

  14. 金時鐘氏「草むらの時」に反響

  15. 時評言

  16. 飽浦敏氏に山之口貘賞

  17. 詩と 私と

  18. 次期役員名

  19. 会員の詩書

  20. 詩人団体の会報

  21. 入・退会会員

  22. 会員発行の詩誌

  23. 会報委よりの報告



盛りだくさんの報告や意見交換


ー第4回総会は熱気充満ー


 第四会関西詩人協会総会は平成9年11月9日午後2時より大阪市北区東
興ホテルで80数名の参加をえて開かれた。快い緊張感の中で、第一部議
事は、南村委員の開会挨拶、司会進行で、まず杉山代表の挨拶、志賀委
員の運営、事業、明珍委員の会報発行、左子委員の会計決算、下村委員
の会計監査の各報告があり、ついで原委員よりの次年度事業計画、左子
委員の次年度予算案、朝比奈委員の次期運営委員と会計監査の選任報告、
島田委員より新委員の五名の紹介があった。水口委員はパソコン通信、
インターネッーホームページの公開報告、のち志賀委員他担当委員によ
る質疑応答に移り、関西詩人協会賞の設定で活発な意見交換があり、三
年に一度アンソロジーから選ぶか、公募作品とするかについては運委に
一することになった。(結果は別掲記事の通り)津坂委員の閉会挨拶で
終了した。
 第二部は講演「ノーベル賞詩人、シエイマス・ヒーニーについて」講
師薬師川虹一氏のヒーニの出自、その生成の風土の中で培われたアイル
ランドの血の立つ地下への執着は多くの感動を誘った。のち詩の朗読に
入り、自選詩集から青木委員の進行で福井久子、福田恵美子、早川玲子、
植嶋亨介、古膝俊子、原圭治の各氏が自作を朗読、ついで十数名の会員
の新刊詩集の自己紹介が福中委員の進行で行われた。飯島和子、岡崎葉、
中尾彰秀、山口三智子、南村長治、大塚子悠、奈良光男、浅田恵子、佐
古祐二の各氏がそれぞれの思いを述べた。充実した協会の多方面での活
動が集約された総会は盛り沢山の内容で時間もやや延長した。
 第三部懇親会は掘、奥村氏の司会で開会日高委員、閉会高橋委員の挨
拶にはさまれて食物美味豊冨、歌ありスピーチありで、目まぐるしく充
実した関西煮定例行事の六時問であった。



自選詩集参加規定…


3年に一回発行する自選詩集は、ことし10月
中に第二集の刊行を予定して、次の要領で準備を進めます。

主旨:関西詩人協会の活動と、会員の足跡を残し、更に新しい活力とす
るため。
参加規定
1.原稿・詩作品に限る(既発表作品も可)
2.4百字詰A4版 縦書きのこと(ワープロはA4版用紙を使用
のこと)
3.割付仕様・一人2頁 題名3行 下に氏名 末尾に住所、略
歴(百字以内)本文 一段組・1行35字40行以内。二段組の時
・1行25字詰60行以内 参加費・1万円(掲載の詩集2冊分を含
む)但し、作品参加者に限り上記の2冊以上を希望される方に
は、定価の65%で頒布(第1集は420頁で定価は3000円、頁が増
える時は見直す)
4.標稿締切・一九九八年六月十五日厳守
5.原稿送り先・山村信男委員宅宛
  6.編集委員・日高 福田 山村各委員
7.校正・本人校正1回 初校到着後一週間以内に朱書して、山
付委員宛返送すること。注記のない限り、新字体、現代仮名使い
に統一。誤植以外の訂正は避ける。
7.発行所は関西詩人協会とする。
8.参加費の送金先・別会計として横田委員が担当する。口座番
号00960・4・113229 口座名称 関西詩人協会自選詩集(振込用
紙紙は次号に挿入)






関西詩人協会賞の設定



平成9年12月13日の運委で、総会での意見をふまえ賛否両論
の意見が出された結果、多数決の方法で次のとおり決定した。
@会員の励みになるものとして貰を設ける。
A対象作品は会員よりの公募作品(未発表作品に限る)
B賞は三年毎とし、自選詩集刊行の翌年とする。(平成11年)
C正賞は賞状 副賞は十万円(予算は一般会計から毎年積立て充当)
D選考は運営委員会が当たる。(人数・人選未定)
E受賞作品の発表は会報で特集する。



 文学館ツアーを開催


 

第一回の文学館ツアーを開催します。
ふるってご参加下さい。
行き先・姫緒文学館  (周辺の姫格城、美術棺、博物館)
日 程・三月一日褐゚前十時集合
場 所・大阪駅中央改札口前・目印は関西詩人協会表示チラシ
費 用・片道一八九〇×2・他にバス代・入場料・昼食代等・昼食は弁
当持参も可(快速利用・発車は15分間隔)
◇当日は、文芸日女路発行人、市川宏三氏等に案内のお世話を依頼中。
文学散歩を兼ねての日程予想ですが、多くの会員の参加を期待します。
◇参加申込連絡先・福中都生子氏



詩の色紙展と募集要領


 当会の色紙展は、12月13日から19日の問、西梅田地下画廊で45
点を展示。道ゆく人の目をひいた。次回は2月に大阪市に会場申込みを
して、とれた日時に開催します。次の要碩によりふるって参加下さい。
1、作品は色紙を原則としますが、新聞紙一頁大までの和紙でも可とし
ます。(但し長大な作品は不可です)
2、裏面に作者、作品名を明記して下さい。
3、参加費は色紙額(仮額代含む) 1000円 各自調達の時は500円。
4、参加者は色紙以外の作品の大きさについて、事前に連格してもらう。
<次回は期日、場所は未定ですが、色紙展をひらきます。出品希望者は、
あらかじめハガキで事務局へ申し込むこと>



大阪文学センターはいま 3



 以前に関西詩人協会運営委員会に、資料として週刊ダイヤモンドの「全
689都市ランキングーこの街に住みたい!」(96.8月)のなかの「文学
館で街おこしの現場」を配布した。このなかに多くの自治体が、博物館・
美術館に次いで設立に動いているのが文学館であるとあった。そして増え
続けた文学館は全国に100以上あるといわれていた。
 ところで文学館をどういう施設として位置づけるかが問題である。詩人
の中村稔氏は、かつて新聞紙上で
1.遺稿、遺品類、研究資料を収集、保存し、閲覧に供する。いわば図書
館的役割が期待されているのか。
2.文学の啓蒙、普及活動の場なのか。
3.観光施設なのか。
4.ある地方の文化活動の発信基地なのか、と施設の理念を問うていた。
(96・5・15「毎日」夕刊)「大阪文学センター」(仮称)の基本計画では、
総論の「設置の趣旨」および「基本的な性格」でその辺りのことを明らか
にしている。
まず「文学の楽しさを味わってもらう」こと、そして「大阪文化の価値に
気づいてもらうこと」次に「文学を通じて大阪文化を国内外に発信する」
ことを趣旨とする。
したがって施設は、
1.文学のアミュージアム(アミューズメントの要素としてのミュージアム機
能を融合した言葉)、
2.言葉の文化センター、
3.文学の創造と交流の広場、
4.文学情報ネットワークの関西センター
 の四つの性格を備えた施設にすることをあげている。
 私達もこの点について賛同するものである。
 ところで三月一日(日)に関西詩人協会の企画として姫路文学館を訪ねる
ことにしている。
 中村実る氏の分で「姫路文学館は安藤忠雄氏の設計による建物が魅力的で
あり、訪ねてみるに値する文学館のひとつだが、これは発足後の職員の方々
の情熱の成果であり、発足の時点では一点の収蔵品もなかったという」と書
かれていた。この建物は市立で、
建築費は約六〇億円、専門職員は五名という。近畿圏でも代表的な文学館で
ある。(原 圭治)





哀 悼


福地邦樹氏
本会の発足時から運営委員をされ、咋年夏病状悪化で委員を辞任、平成9年
11月8日多臓器不全のため逝去。亨年66歳。
高校生時代から伊東静雄に師事、昭和21年1月、田中克己、小高根二郎らと
創刊した「果樹園」の編集同人となったのは大阪大学文学部三年生の時。
その後「四季」第五次、「柵」の同人として活躍。一方、研究者として
伊東静雄についての多くの論文をのこしている。

呵呵青山氏
本会会則の改正にあたって豊富な知識でご支援下さった方、(本名・川崎和
拓氏)は、平成9年3月15日の夕方、合気道道場で着替中臥せられ、救急車で
病院に運ばれる途中、脳梗塞で逝去。亨年69歳。




「女性artistは語る」


97・10・11(土)主催出BLACKPAN 後援 大和高田市文化協会が 大和高田
市葛城コミユニセンターで開かれた。
*Creativeの秘密を語りあう女性芸術家のシンポジュウム。詩人 新井豊実、
 絵画 森本紀久子、作曲 振津郁江、ニードルアート 高野澄子、舞踊 シャ
 クティ、舞踊演出 ヴァサンタマラ、司会 日高てる。
*男性からのmessageとして作曲家 物部一郎氏テノールの披霜(日高てる
 詩「花火」「パラダイス」ピアノ伴奏 金井桃彦)。
*岡山から井奥行彦、なんばみちこ。大垣から成田敦、紫圭子。三重から津坂
 治男、山本倫子、加膝千香子。深夜バスにて夜明けに当地に現代詩人会会長
 長谷川龍生氏。画家 片山昭彦。文学学校講師 高畠寛、日野範之。地元の
 老人会会長 志野藤作氏。90才から小学四年生まで。参加者80名。
*いずれもCreativeに生さようとする集いであった。時あたかも高田市制50周
年にして秋祭。[おかげ踊り]路上真最中。(日高てる)



小野十三郎没後一年
 蜻蛉忌(せいれいき)の催し



 10月5日午後2時より大阪ミナミの暫座で葦の会や大阪文学学校により小野十
三郎氏を偲んで没後一年の制令蜻蛉忌が催された。開会挨拶杉山平一氏、講演
「小野十三郎さんのこと」辻井喬氏、「青春の小野十三郎」寺島珠堆氏に続い
て演出日高てる氏によって「十三郎をうたう」(作曲物部一郎氏)として「ひ
とりの山」「最後の稟」を合唱、「思い出を語る」スピーチは上林猷夫、暮屁
淳、安水稔和、金時鐘、福中郡生子、青木はるみの各氏が行った。長谷川龍生
氏の閉会の辞ののち懇談会にも多数の参加があった。



高校生のための詩の教室


 小・中・高校生の文芸を奨励するため『交野が原賞』を設定し、年一回地域
を中心に広く詩作品を募集してきた。もう二十年以上になるが、毎回三百から
四百編の作品が集まってくる。その内申・高校生の作品は少なく、特に高校生
はごく限れている。思春期の一番感受性の豊かな時期ではないかと思うのだが、
なぜか、文章を書くとなれば何も書くことがないといった表現力のなさが指摘
される。
 現在の中・高校生の国語の学力観を「読解」より「表現」に重点を置さ、新
しい世代の「生きる力」の基礎・基本としている。「読解力」はテストに強くな
る学力である。高校生が、これから創造力や表現力を豊かに発揮し、詩に挑戦し
てくれることは喜ばしいことである。関西詩人協会が、二十一世紀に向けて、若
い高校生の詩の書さ手に注目しているのは興味深いことである。 (金堀則夫)



詩の教室


 5月16日 志賀英夫氏。 午後一時より四時アピオ大阪。


会員の活動


杉山平一氏  講演関係「歴程と四季」(歴程セミナー・奈良文化会館)。
9・25「織田作之助と北野田」 (北野田公民館)。
10・24「神戸と映画文化」(神戸映画祭オープニング・朝日ホール)。
10・26「詩のこころ」(北野高校同窓会総会)
 執筆記事 9・6「生活第一芸術第二」(公明新聞)。
10・7「詩の南方と北方」(東京新聞)。10月「現代詩における小野十三郎の位置」(樹林)。
11・128「20世紀の古典三好達治」(東京朝日新聞)。
12月「詩人田木繁讃」(新日本文学)
青木はるみ氏 第26回目教組文学賞選考文「目の位置とスケール」(教育評論)。
『大阪の文学・近現代篇』に詩「再会」収録。
「アルファ」117号に玉置保己氏追悼文「忘れません」執筆。
『現代詩と書の世界』に詩「喫茶店で」、
『中国語版・日本戦後名簿百家集』に詩「事故」収録。
11・25 生活と文学の会で 「私の詩その出先から」講演。
「新日本文学」12月号に田木繁氏追悼「『残照』の日に」を執筆。
11・1 豊中市民企画講座「芸術の中の女性」講演。
南村長治氏 「新日本文学」g月号に田木繁氏追悼「世事ともに茫茫たり」を  執筆。
日高てる氏 10・11BLACKPAN主催で「女性artistは語る」とテーマして80人劇場を
葛城コミュニティセンターで開く。新井豊美、シャクテイなどが出演した。
有馬 敲氏 97・8・I8より ブエノスアイレスの「ポルヘス記念国際詩祭」に招かれ
詩朗読。スペイン語圏詩人たちと交流。8・19より9・1 マケドニアの「第36回ストルガ
詩のタベ」に出席。拙著・マケドニア語訳『極東の空の下』(スエビエ・スペクタ
ル・プレス社版)の発表など。8月『文学台湾』夏号に、詩集『小オデュツセウスの唄』
8篇が台湾の詩人李魅賢の小国語訳で紹介された。9月アルゼンチンの詩誌『Carta
Internaciomalde Poesia』に詩作品「生き残りの唄」がパージ一ニア・ローダスの
スペイン語訳で掲載された。
11・9 映画『ザ・ハリウッド』(野村恵一監督)にゲスト出演し、詩朗読場面のロ
ケ撮影。98年5月ごろ封切。
12・13 三重詩話会で講話「いま 詩について考えていること」(津・大観亭)。
98・1『図書』(岩波書店)1月号にエッセイ「トランシルヴァニア控」発表。
三島佑一氏 四天王寺国際仏教大学『仏教聖歌集』に、「父母の歌」「観音さまと私」
「み仏の言の葉の海」「内なる仏」「土をふむ」「陽はわれに」「希有なるわれら」
を作詞。
森ちふく氏 大日如来座像(運慶作)模写油絵百号を柳生円成寺に奉納。
飽浦敏氏 詩集「星昼間」(揚川雷房)で第20回山之口須賞を受賞。
吉田幸子氏 詩集『小さな考古学』(書砕青樹社)で第11回福田正夫賞を受賞。
奈良光男氏 作品「鯛やき」で国民文化祭・かがわ97で香川県詩人協会会長賞を受賞。
福田万里子氏 「飛梅」11月号に「花のこよみ」49を執筆。12・9新潟県湯沢中学で
の魚沼少年詩祭で「少年詩について」講話。
「詩学」1月号「VOICE OF POET」に「めくれなかったカレンダー」を執筆。
島田陽子氏 「講演関係」10・5門真市教育研究会で「詩とわたしちそして子どもの世界」。
 10・17豊中高校PTA総会で「暮らしの中の言葉あれこれ」講演。
10・20帝塚山学院大学で「詩とわたし」。
11・2和歌山県詩人協会で「方言詩について」。
11・28千葉県市川市福栄小学校で「詩を書いてきて」。
高橋徹氏 作詞した「私の街の措物語(作曲平岡荘太郎氏)が1・3NHK
ラジオ第2で
放送された。
日高滋氏 日本詩人クラブ編『現代詩の50年』に論考「ふふふからぐぐ
くまで−
現代詩におけるユーモアとペーソス」と京都関連の詩誌の解題を担当。
喜尚晃子氏  小説「小鳩」(手鞠文摩・月刊)を上梓。



 

三つの文学館と関西文学館
          三島 佑一


 

掘辰雄文学飴に行った。離れの和室二面に愛蔵書が並んでいる。上って本を見よ
うと思えばできるほどだが、掘多恵子夫人の言によれば模造品、本物は別に保存
してある由。しかし外から見る限りわからない。掘辰雄が療養していた木造の平
屋もそのまま保存。横に戦後新築し夫人が住んでいた大きな山荘が展示場に提供
されている。新たに建てられた管理棟と閲覧室には、関連研究書が北べてある。
芝生が広く、後ろは浅間山、いかにも信濃追分らしい。町立経営である。
三月にできた立原道造記念館は東大弥生門前、弥生美術絶と竹久夢二美術館と
続いていて環境がいい。二階三階と六畳くらいずつ、狭い割にはなかなか工夫が
してあって見ごたえがある。館長の掘多恵子夫人の言によれば、個人の篤志家の
設立で、入場料で経営しているとのこと。奇特な方があると思った。
 萩原朔太郎をメインにした前橋文学館は広瀬川の畔にあり、展示ガラスに文字
が記入されてあったり、写真や本が立板古風にアップしてあったり、立体的でひ
どく工夫がこらされているのに感動した。他に郷土作家の展示も。文学者に対す
る市の愛情を感じた。
 私は船場道修町に生まれ育った関係で、十月にオープンしたくすり道修町資料
館の展示に少しお手伝いした。340年の歴史を持つ文書類がきれいなのに驚く。
薬や町の歴史や文化が一目でわかるが、展示会場が狭いのでもう一工夫いるよう
にも思う。入場無料、業界の出資で設立維持運営している。
 十号の会報に、朝日の論壇に「文化都市誇れる大阪文学飽を」を書いたことを
紹介していただいた。思えば、京都、奈良、神戸、和歌山、大津、皆公立の郷土
文学館がない。関西詩人協会の呼びかけをより大にして、文学館不在の関西にな
らないようにしたいものである。



ピュアな詩精神の表白ー日本社会への冷静な目
  −金時鐘氏「草むらの時」に反響

在日の意味を問い続ける金時鐘氏の評論集「草むらの時」海風杜刊)は、各誌
紙に発表した62編を収録した。その反響は朝日新聞文化欄(9/24)で五木寛之氏が
同紙読書欄(11/9)で栗原彬氏が書評したのに始まり、同紙学芸欄(12/13)で「
異国日本に生さ自分・社会見つめる」との見出しで「テーブルトーク」でも紹介さ
れ、〃戦後の一時期、梁(石日)さんらと大阪の旧造兵廠跡から鉄くずを運びだす
「夜盗」をしていた。当時は官憲の目から逃れるために「草むら」に潜んだ。表題
の巻頭評論「草むらの時」にその思い出も記されている。実は詩人・金時鐘は、そ
のとさだけではなく戦後ずっと、草むらの中から、在日朝鮮人社会とそれを「疎外」
する日本人社会を冷静に見続けてきたのではないか。”と長谷川学記者はむすんで
いる。道浦母郁子は同紙(12/21)読書欄の「書評委員が選んだ今年の3点」の中の
@にあげ、〃大阪の地に生き、硬派の詩人として知られる著者のやわらかで人間的
な内面を照らし出すエッセイ集。自由と孤独の狭間(はざま)で揺れ動くピュアな
詩精神の表白が、鮮やかな彩雲のように重層的で深みのある世界をかもし出してい
る。”と述べている。



時評言


「皿一つバケツ一つあれば生きられることを知った人は強い」

今や文学は変革期というよりは衰退期末に入ったのでしょうか。マルチ人間、
機器のはびこる世では、人生観や主体性ということばも空しく、柔軟に対象に溶け
入って安易に他に依存し甘えに甘えるのです。うわべのデコレーションにうすら笑
いか冷笑を送る自己喪失の衰退現象となって、世の志や愛を擬似めいたしぐさに置
きかえて、快楽ときかえて、快楽と安逸の宿に閉じこもるやどかりの馴れ親しさを
労せずして提供してくれます。
実は文学はそれと対映すべきところに立つものであったはずです。ことばのパフォ
ーマンスの横行は、その根底性にあるべさ人間性欠如の表れとして、最もその甘え
の内実を問われねばならないものではないでしょうか。物質も精神も飢渇感なく手
足一本動かすことなく快楽を手にでさる飽食の社会では、人間存在や肉感を通した
夢もつくれないのではないか。     (M)



飽浦敏氏に山之口貘賞


第30回山之口貘賞は飽満敏氏『星昼間』が受賞した。飽浦氏は石垣島出身、八
重山群島政府財政部に勤務ののち大阪へ。離島後、30数年たって第一詩集『悠久ぬ
花』(浮遊社)を出し、さらに十年近くして今回の詩集『星昼間』(揚川書房)を
出版。故郷への想いを、つのらせたその世界には、< 遠い記憶> の井戸から汲みあ
げられた太陽、月、海、風、花樹に隠された祖先のまなざしがある。星明りに照ら
された地上を< 星昼間> と呼んだのである。(詩集『星昼間』に付す以倉紘一平氏
の抜文より要約引用)




 

詩と 私と 吉田 貴子


小さい時から本喰い虫でした。それはひたすら、本の物語の中に埋没し、さ迷
い、自分を無くしてしまう読み方でした。二十年ほど前、ふと現代詩の教室に通う
ことになり、始めて、距離というものを知りました。
 物と対峙する、物を見る、物象を見る、それらが問いかけてくるものを、在るこ
との意味や意義を、シッカリと見つめ、感じ、受けとめることを教わりました。日
常生活、己の周辺、なんでもない平凡な事実や、事象が、新しい命に蘇り、訴えて
来、喜怒哀楽の表情や感情を持っているのを知りました。今度はその距離の中でさ
迷い、いつか二十年たちました。おそい出発でした。目分の詩の道はどれかと手探
りで歩いているうちに、思いがけず「福田正夫賞」を授けられました。今は、授け
られた、その意味を考えています。(詩集『小さな考古学』(書肆青樹社)で第11
回福田正夫賞を受賞)



 …次期役員名

< 代表> 杉山平一
< 運営委員> 青木はるみ・朝比奈宣英・有馬敲・金掘削夫(新)・志賀英夫・
 左子真由美・島田陽子・湘野とし・高橋徹・竹内正企(新)・津坂治男・原
 圭治・日高てる・福田万里子(新)・福中都生子・水口洋治・南付長治・明
 珍昇・山村信男(新)・横田英子(新)
< 会計監査> 下付和子・柴田恕彦(新)
 (以上は11月9日の総会で承認、任期は3年)
 



会員の詩書

中岡淳一詩集「天空へ上がる階段」(風涛社)▽甲中信爾詩集「春の別れ」(近
代文芸社) ▽浅井薫エッセイ集「スペイン断章」▽浅田恵子著「詩のなかの中学
生」3集 (詩画工房) ▽西田彩子詩集「無限旋律」(ひまわり書房) ▽奈良光
男詩集「人類の愚考」(視点杜) ▽中尾彰秀詩集「何事もなかったかのように」
(編集工房ノア)
詩人団体の会報(受贈分)
 福井県詩人懇話会会報(38)、広島県詩人協会通信(176-177) 群馬詩人クラブ会
報(190)、東海現代詩の会会報(6)福岡県詩人会(109)、大分県詩人協会会報(85)
福島県現代詩人会会報(60)埼玉詩人会会報(43)、鹿児島県詩人協会会報(43)、石
川詩人会会報(2)、北海道詩人協会会報(106)、島根県詩人連口会報(45)、中日
詩人会会報(121)
▽合同詩集
 岩手県詩人クラブ編作品集、詩集ふくい (福井県詩人懇話会)、現代山口県詩
選 (山口県詩人懇話会)



入・退会会員

(9・10ー11・30、一部前号洩れを含む)
入会 立山澄夫(大阪)、内田健司(島根)、山村信男(京都)、
 竹内正企(滋賀)、山田満世 (大阪)、小磯ミハ子(大阪)、阿木鉄郎(兵庫)
退会 平信子(大阪)
九年十一月三〇日現在の会員数は380名。

 



   

会員発行の詩誌

<左は詩誌名、右は主宰者名。( )は所属執筆の会員名。>
 
貝の火 6 紫野京子 石の森 82 83 金堀則夫 索 14 (水野ひかる 田端宣貞)
潅木 528〜531 高橋徹 堕天使 4 (センナヨオコ) MessierlO (香山雅代)
May Pull 10 (添ひろみ) 西宮文芸 6 (香山雅代 紫野京子 山南律子 小林重樹)
羊歯 3 蒔田耕一 森林12 (谷口 謙) 火牛 38 (日高てる)
Riviere 34 35 横田英子 火曜日 52 (西川邑子 田中信爾)
詩の周辺 29 30 大西宏典 les alizes 61(西川邑子 飽浦 敏)
西毛文学170 (三方 克) 乾河 20 朝比奈宣英 人問129 (外村文象)
フーガ 24 25 野間亜太子 柵 131ー134 志賀英夫 季 78 小林重樹
三重詩人170 (中岡淳一 仲玲央 黛元男)文芸タイムズ 254 (田中国男)
樹音 26 森ちふく 火箭 20 (紫野京子 水野ひかる) MODERATO 8 岡崎葉
現代詩神戸181(豊原清明 永井ますみ 江口節) 点燈鬼 47 (名古きよえ)
軸 40 山本しげひろ
TATAAR 5 6 小林尹夫 MOE 4 津坂治男 呼吸 92〜95 有馬敲
異郷 1月号 (村上久雄 浅井千代子 おれんじゆう) 叢生 91〜93 島田陽子
詩のちらし 下前幸一 森羅通信 94 中尾彰秀 翔10 おしだとしこ
みえ現代詩 44 津坂治男 理久創司個人誌 61 炎樹 24 (仲玲央 奈良光男)
ふ−が 24 宇田良子 陽 62 63 福中都生子 Arcadia 1 (堀 諭) PO 89 水口洋治
新怪魚 65 (上田清 曽我部昭夫 中川たつ子 南村良治)
風の森 23 山村信男



★会報委よりの報告

▼会報は年三回、二、六、十の各月一日に発行します。原稿しめ切りは各一か
月前を締切と変更します。詩人会の会報は、会員相互の交流の場と、他の機関
へのPRを目指して発行しています。▼年三河の発行ですから新鮮なニュース性
は期待できませんが、その問に底流蓄積されたエネルギーの結晶としての紙の
役割と割切れば、このお百度参りに似たミニコミ紙の威力も捨てたものではあ
りません。具体的な編集面での柱としては、会員の業績の記録、アットホーム
な企画記事、たとえば人物やグループの「クローズアップ」、シビアな詩人の
見た「現代の視点」阪神大震災への視点、随想的な「私と詩」、この協会発足
の目玉ともなった文学館設立への歩み等、啓蒙、解説的読み物もとりあげます。
▼企画記事は会報委の手足の動くところ、その開拓の分野はさまざまでしょうが
なにぶん物ぐさに落ちるは世の習性とか、眼光紙背に徹する力不足をカバーして
無難に依頼を原則としていますが、このことは逆に、種々なご意見、近況、自己
PR、グループPRの可視性をはらむ誘い水と了解くださって結構です。なにぶん紙
面制約もあることですが、編集側としては、出来るだけ多くの会員の方々の活動
ぶりを紹介したいのです。
▼会員外の発送先としては、全国紙、地方の有力紙、各詩人会、主要図書館など
百件くらい発送します。きちんと読まれるならば、これ程確実なPR紙はありませ
ん。この協会は所帯が大さいので、複合的に色々の記事があってよいと思います。
「時評言」でも述べたようなシビアな格闘の現象の場が案外、このようなささや
かなミニコミ紙のエッセンスなのかも知れません。 (明珍)



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