関西詩人協会運営委員の頁

 榊 次郎委員







所属詩誌  詩人会議・大阪詩人会議「軸」

主な著書「20年とはたち」「未完・愛のメッセージ」

我がふる里

俺にはふる里などと呼べるところは無い

S字形に小川が流れ、雑木林があり

黄色い菜の花に戯れる蝶がいて

屏風のように緩やかな山が村を包んでいる

そんな風土記に出て来そうな風景など

生まれた時からありはしなかった

「我がふる里は」などと語る人が羨ましい

あるのは街を切り裂いていく車の騒音

真夜中に喚く酔いどれのダミ声

言葉を交わすことも無い隣人

ここが人間の住むところかヨーとぼやきながら

住み続けるアスファルトジャングル

それでも人恋しくなった時

斜め前にある居酒屋

その名も「ふる里」

ここで出会ったおっさんが目を細め

懐かしいふる里を語るのを聞くと

見たことのない風景が

自分の事のように思えてくる

ふる里を捨てた者と

ふる里を持たない者が出会う

雑踏が森であり、喧騒が川のささやき

それがマイ・カントリーOSAKAだ


   






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