関西詩人協会運営委員の頁




横田英子



「冬の花」

 

 

冬の風と共に 高校生が走る

山茶花も白い雲も

冬の日も供に駈ける

私の脳裏の底で蘇る日々

 

マラソンの苦手な高校生は

ひたすら悔しく辛かった

息も絶え絶えに

もう最後に近い順番表を貰って

ゴールインした運動場に咲いていた山茶花

 

あの時のように

高校生集団は 徐々に列が乱れ

前に前に あるいは疎らに

競り合い駈けていく

校門を出て 街中に向かって

 

若者たちの背に 流れる光を見る

一つの時代の破片のようで

何十年も前の過去の断片も 降ってくる

雪片となって 心の底に降り積む

 

流れる時に同化し躍動する力の雫は

しぶきになって飛び散ってくる

いつの間にか晴れた空に

若い力が映える

目標に向かい 順位を張り付けられても

微笑むゴールイン

 

必死で励ます拍手

その身になって勇気づける言葉の重さを知った

その隅に咲いていた紅い山茶花が

眼の端に今も咲いている

 

時に川のように あの日々が流れ

過去の時を遡る

その過程で咲いている

冬の寒い朝が似合う花だ


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