関西詩人協会運営委員の頁




田村照視



「鏡の中」

 

 

鏡を拭く

曇った姿見の中を

誰かが今後ろを横切った

ふり返ったが誰も居ない

 

黒い服装だった

カラスが肩に止まっていたが

喪服だったか

 

怨念か 

復讐の鬼か

憎しみの炎が燃え上る

鼓動はたかまり

全身がふるえて

殺の予感

 

埋葬哀歌が

人影と人影の間を流れ

放たれた矢は闇を抜け

やがて

静寂を取り戻す

 

ふたたび鏡の中

黒い服が背中で笑った

ふり向くとモーニング姿

後ろには多くの祝い客

手を上げ笑顔で応える

愛の予感

 

岐路は那辺にあったのか
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