関西詩人協会運営委員の頁
松村信人
「彷 徨」
スーパーで買い物をしたあと 買い物籠を持ったまま帰ってきていた 誰も何も言わないからその買い物籠でスーパーに出かけると 警備員に呼び止められた コンビニのレジで週刊誌をさしだして待っていたが 店員の対応が遅いので 釣りはまだかと声を荒げたら まだお金をもらっていません このボケ老人がといいたそうな顔を尻目に 傘立てから少しましなビニール傘と取り換えて帰る 赤信号の横断歩道を渡り切ったら 婦人警官が慌てて飛んできた 思わず笑顔で手を振り ボケ老人のふりをしてやり過ごす ボケていないぞ私は それでも思い出せない 思い出そうとしたことが思い出せない そしてとうとうやってしまった 自分は何をしようとしていたのか 自分はどこへ行こうとしているのか ボケていないぞ 私はボケていないぞと唸りながら |