関西詩人協会運営委員の頁




市原礼子



「ひらりひらり」

 

 

雑多なものがあふれる机で

空の端っこが覗いている

メガネケースをどけると

小さな青空が現われた

白い雲も浮かんでいる奥深い空

そこから抜け出すように

瀟洒な塔がびゅーと立ち上がる

東京スカイツリーの3D絵はがき

 

足もとに現代都市の景観

遠くに海も見える

孫娘と遊んだあの日は富士山も見えた

別れの時

ホームの向こうの方へ行ったきり

戻ってこなかった

きっと涙をみせたくなかった

 

もっと小さな頃

いつのまにか

二階の窓から団扇を飛ばしていた

あらまあ 落ちないでよ!

と言ったら

どうして怒らないの?

そう言った

下を見ると団扇が何枚も

ひらりひらり

 

絵はがきの塔からも

ひらりひらりと 

落ちていくものが…

いつもしてやられる 孫の成長

次に会うのが楽しみ

編み細工のような塔は

街を見下ろし

孤独に美しく立っている

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