今日は忘れられない日


渡辺俊文

 

 

今日9月13日は53年前、お母さんが畑の雑木を一輪車で運んでいて、

腸捻転を起こした日。夕方父から「ハハキトクスグカエレ」の電報。

容体気遣いながら急いだ。電報打つほどのことはなかったなと安心したほどだった。

母も「お父さんが大げさに電報など打つから。すまないね」と言った。

夜9時ごろになって、足先が冷たいのに気づいた。電話を入れると病院に連れて来てくれと言う。

そこで、運んだ。点滴をしながら手術の準備をしているといったが、血圧が上がらないのでできないと言う。

母は点滴の針を払いのけようと何度もした。痛かったのだろう。

「ああ、もうだめだ」が最後の言葉だった。意識は最後まであったのだろう。

時刻は夜の12時を過ぎていた。享年53歳のあっけない母の死であった。

あれからちょうど53年が経つ。今年生誕106歳である。

私はいっぱい母のことを短歌に詠み、詩に書き、エッセーに書き、掌編小説に書きしている。

生前「ありがとう」の一言も言わず、迷惑と心配ばかりかけたので、せめてもの償いと思って。

今日はそんな日である。

  

 

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