新しい扉の向こうへ


村野由樹

 

 詩集を作るたびに思いがけない、ここからの旅立ちをしたいという気持ちが湧き上がってきます。

 第一詩集『渡し船』を二〇一一年に作成し、十一年後の二〇二二年に『航海』の発行となり感無量です。計画性のあるものでなく突然に、一つの段階を越えたと思えた時に詩集が作りたくなっております。振り返り考えると、十三年前に救護施設の通勤帰りに救急搬送されて入院した時に、いったん私自身の詩作品をまとめておきたいと思ったことが『渡し船』を作った切っ掛けです。支えてくれた詩の言葉の力が私に寄り添ってくれて、生活に取り組む意欲をもたせてくれたことが『航海』を作る切っ掛けになったと考えます。「メロデイー」と「白球の行き先」を作った時に、―詩集を作りたいーという気持ちが芽生えてきました。

 救急搬送をされ小脳出血手術後にICUで夜に目を開けたら、いつも看護婦さんが座って眠っていました。ICUに居る時に詩が浮かび、「銀河詩手帖」と「関西詩人協会アンソロジー」へだしました。そして見いだしたのは、詩を作ることを大切に思っている私自身でした。

 退院後一五分ぐらいにあった図書館へ車椅子でよく行ったのがリハビリになりました。歩けないこのままの状態では、今までのような詩は書けないと思い、神戸三ノ宮「詩の教室」へ四年ほど通ったのが「風の音」同人になったことへ繋がっていいます。

 今では障害者当事者としての体験を活かした活動や、ピア(仲間)研修へ取り組んでいます。関西詩人協会実作講座やイベントに、時々参加させてもらっています。

 生活や景色を捉える視点が変化してきています。車椅子の目線は低くなっています。このことからの詩の世界を味わい、詩の言葉で表現できるように、なっていきたいと思います。

 万華鏡の世界がつづくように、新しい扉は続いています。扉の向こうの詩の世界を見ていくことを望みます。

 

 

                  

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