水内喜久雄さんの本との出会い


阪南太郎

 


 「こんなにたしかに」(まど・みちお 理論社)、「かさなりあって」(島田陽子 大日本図書)など数々の詩集の編集をされている水内喜久雄さんの編著書は自宅に山のようにあります。これらの本との出会いは私の詩作に大きな影響を与えました。
 水内さんは小学校の先生をされたあと、名古屋で詩専門の私設図書館「ポエム・ライブラリー夢ポケット」を運営されていた方です。編著書は小学生、中学生を対象にしたものが多いですが、どれも命の大切さ、平和の大切さを書いたものばかりで大人が読んでも胸を打ちます。詩に何歳向けというのはない、水内さんの本を読むとそんな気がします。水内さんにはじめて手紙を出したのは「おぼえておきたい日本の名詩100」(たんぽぽ出版)を読んだ後です。私はこの本で「戦争はよくない」と言う詩で平和の大切さを切々と訴えている武者小路実篤が時代の波には勝てなかったことを知り大変ショックを受け、「武者小路実篤も今生きていたら平和憲法を守るために筆をとっていると信じています。」と言う内容の手紙を書きました。すると、すぐに
「わたしも同じ考えです。平和が一番ですね。」
と言う返事が届き感激しました。まさか返事が来るとは思いませんでしたので。水内さんとは、お会いしたことは一度もありませんが、これがきっかけで時々お便りを頂くようになりました。
 自宅に送って頂いた御著書「ステキな詩に会いたくて」(小学館)、「一遍の詩がぼくにくれたやさしい時間」(PHPエディターズ・グループ)は私をまど・みちおさんの虜にしました。これらの本に紹介されているとおり、まど・みちおさんは、やさしい、少ない言葉で深い内容を書く詩人です。「ステキな詩に会いたくて」で紹介されている「アリ」は、人間とアリは体の大きさは違っても命の大きさは同じであるとうたっています。「一遍の詩がぼくにくれたやさしい時間」で紹介されている「こんなにたしかに」は、地球は人間だけのものではないとうたっています。
 また、高丸もと子さんの「今日からはじまる」、下田喜久美さんの「独楽」、津坂治男さんの「百日目」など、元気の出る詩や、日本語の楽しさ、美しさを教えてくれる、よしだていいちさんの「さかさかけことばうた」、山本なおこさんの「おばあちゃん語」なども水内さんの本で読みました。最近は、関西詩人協会の方々の本のあとがきを、よく書かれている野呂昶さんの詩にはまっています。近刊「森の中ですきとおる」には「いのち」と言う言葉が何度も出てきます。まさに小鳥やリスやウサギのいのちの声から生まれた詩集ですね。
 これからも、たくさんの詩人の方の作品に学び幅広い年齢層の方に愛される詩を書けるように精進したいと思います。

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