新型コロナウイルス随想

 


藤谷恵一郎

 

         
 グローバル化のエントロピーは極限まで増大しているように思える。資本の論理によるこれ以上のグローバル化は歪みや弊害を生み続けるだけだ。二億年近くも地球の覇者であった恐竜の一頭よりも、先進国の市民の一人はさらに多くの資源を消費している。
 ゆっくりと半歩自然に帰ろう。地球の肺胞である小さな森に林で樹木に寄り添おう。樹木に寄り添ってもらおう。もう人間は地球に対して新型コロナウイルスであることを止めよう。
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 今年の春・初夏は、躑躅や薔薇が鮮やかだった。それに湧き出たような紋白蝶の数も多く、何よりも小さな羽ばたきが喜びに充ちてしっかりとしている。近年はどこかはかなげで病んでいるようにとまどっていた。しかし今年の蝶は命をゆっくりと楽しんでいるようだ。人間の二三か月の活動自粛で回復していく自然の弾力の素晴らしさ。
 服部緑地公園の疎林のベンチで蝶たちをみていると、光のスクリーンに蜃気楼のように人類滅亡の相が浮かんだ。光と緑の綾なす淡い抽象画のようなものだ。それは人類の不遜さ・愚かさ・滅亡の悲惨さというものよりも、蝶たちのメッセージが主旋律であった。蝶たちは無心に人類滅亡のあとに、何かを伝えようとしている。生命に対し蝶みずからは白紙のまま何かを運ぼうとしている。生命のひとつの細胞の不可思議をそのまま喜びながら。
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 コロナ禍の春
 芝生に寝ころべば
 青さ以外なにもない青空


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