マチカネワニと波の化石


市原礼子

 

    

 今私が住んでいるあたりは、古代には海だったらしい。最近、家の近くの大阪大学総合学術博物館、待兼山修学館という所に出かけ、そのことを知った。そして、以前から一度見たいと思っていた、マチカネワニの化石を見ることもできた。

 マチカネワニは日本で初めて発見されたワニ類の化石で、1964年に、豊中キャンパスの理学部建設現場から出土したそうだ。地名が待兼山であったことから、マチカネワニと命名された。

 実は豊中駅のそばにワニ料理店があり、珍味を食べることの大家である夫が、さっそく目を付けていた。私も興味はあったが、いつのまにか看板が変わっていた。実物のワニの骨の化石は、巨大なグロテスクなもので、食べる対象としては考えられないものであった。夫によれば、料理に使うワニは種類が違うらしい。

 待兼山からは、古墳がいくつも発掘されているので、古代人が生活していたのはまちがいない。景勝地としても古くから有名であったようで、枕草子にも記されているという。山といっても標高77・3メートルの低い山である。

 ワニとは別に、私が驚いたのは、海底の波の跡が地層に残っているということであった。無限の時の流れが地層に刻印されたかのように、波で変化した砂の地層が、地殻変動によりいつしか陸上に現れた。私が歩いている近所の丘の崖から発見されていたという。きっと、1970年の万博の工事で、発見されたのではないかと、私は想像している。そんなことを知ってからというもの、周りの景色が違ったものに見えてくるのが、不思議である。

inserted by FC2 system