嘴細鴉と嘴太鴉


嵯峨京子




 朝、台所の窓を開けると、向かいの3階建ての建物の屋上に一羽の鴉がとまっている。週に2日の生ゴミの回収日には、決まってこうした物見役の鴉がいる。そうやって付近の餌となるゴミの状況を仲間に伝達しては、その日の行動が決まるらしい。

 日本に棲息する鴉は、主に嘴細鴉(ハシボソガラス)と嘴太鴉(ハシブトガラス)だが、こどもの頃に身近にいた鴉とはどこか違ってきている気がして、鴉を見れば確かめずにはいられなくなっている。

 嘴細鴉と嘴太鴉の違いを簡単に言うと、嘴が細く頭部への傾斜が少ない嘴細に対して、やや体が大きく、嘴が太く頭部への段差が大きいのが、嘴太。鳴き声は嘴細がガアガアで、嘴太はカアーカアー。地上で歩くのが嘴細で、ピョンピョンと跳ぶのが嘴太。開けた場所、視界の良いところを好む嘴細。森林、入り組んだ地形、ビル街を好む嘴太。共に雑食であるが嘴細は植物を、嘴太は肉食を好み高い所で食べる。と、書物には書かれているが、嘴細が嘴太に似た鳴き声で鳴くのを聞いたことがあるし、鳩の死肉を喰らっているところも目撃している。互いの種は、棲み分けが出来ている訳ではなく、隙あれば相手のテリトリーに入り込もうとする攻防は、常に行われているはずだ。因みに私の住んでいる町では、嘴細が優勢だが、産卵期でもあり、最近嘴太をよく見かける。

 今後も鴉を見かけるとどちらの種なのか観察したい。いや、鴉は人の顔をよく憶えているというから、観察されているのは私の方なのかも知れないが。



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