第一回「紅白歌合戦」参加の自作詩 (朗読順)

当日の様子(Youtube動画が開きます)

 

森田好子  「エイサー」

 

ヒヤサーサ ハイヤー

ヒヤサーサ ハイヤー

ヒヤサーサ ハイヤー

湧き出るパワー

バチとパーランクに込めて

華麗に舞い 打ち鳴らせ

手上げ足上げ 声上げろ

ハイヤーイヤサーサ

 

ヒヤサーサ ハイヤー

ヒヤサーサ ハイヤー

ヒヤサーサ ハイヤー

心合わせてー

てーく 打ち鳴らせ       *てーく…太鼓

命花咲かそう 福を呼べ

手上げ足上げ 声上げろ

ハイヤーイヤサーサ

 

ヒヤサーサ ハイヤー

ヒヤサーサ ハイヤー

ヒヤサーサ ハイヤー

五穀豊穣

ご先祖 皆さま ありがとう

笑い福きた 持ち帰えろ

ヒヤルガエイサー スリサーサー

ハイヤーイヤサーサ

 

スリ スリ スリサーサー

スリ スリ スリサーサー

 

   パフォーマンス  東に客あり

         西に客あり

         南に客あり

         北に客あり

         恥はかき捨て

         楽しもう 楽しもう

         サーサ

 

 

 

藤原功一  「突然に死神さんにおうてもた」

 

健康寿命を延ばそうと

ウオーキングの最中やった

足元が突然消えはじめた

どこからか 声がかかった

 ぼちぼちでんな

 時間切れですわ

 ほな行きまひょか

 

あれ! どうしたんやろ

なんかゆうてる

 こんなもんでっせ

 あっさりしたもんですわ

 こんな逝き方が一番でっせ

 後のことは後の祭りやさかい

 なーんも心配しやんでも

 奧さんがちゃんとしはります

 

え! なに? だれ?

なにしゃべってんのや

固まってもて声も出されへん

 わては死神でんねん

 せや! いまなー

 川をわたるのに1000円いるねん

 お金持ってへんか?

 

死ぬの…… えらいこっちゃ!

とりあえずここから逃げ出して

はよ家に帰らんとあかんわ

 いうとくけどなー

 ええ潮時やで

 それとな 今逝けへんかったら

 閻魔さんもへそまげて

 こんどは地獄に間違いないで

 阿鼻叫喚の地獄が

 時間無制限に続くんやで

 

そんな恐ろしい話に震えあがって

おもわず小銭入れを差し出してしまう

 1000円あるやん

 よかったなー

 ちょうど

 「三途の川」直行のお迎えもきてくれたで

 向こうに着くまでは

 あんたの一生を編集した走馬灯を

ゆっくり回していったらええで

 

黒光りの高級そうなお迎えの車に乗り込む

 ほなここでお別れやなー

 心配しやんときや

 あんたはたぶん極楽行きやで

 

極楽にいけそうで胸をなでおろす

はじめて死神さんにおおたけど親切やなー

 さあぼちぼち時間やから

 次のお迎えにいくわ

 ほな さいなら

 

 

 

青木春菜  「猫と魚」

 

生まれ変わったら

また 一緒になりたいね と

飲みかわしながら 夫とおしゃべり

 

わたしは 猫になるから

あなたも猫になるんだね と

水を向けたら

 

猫になんかなりたくない と言う

よくよく聞いてみると

どうやら 魚になりたいらしいのだ

 

そういえば 今のマンションに引っ越すとき

入居前のリフォームで

書斎の壁紙の色に 濃いブルーを選んでいた

内装業者が 室内が暗くなるけれど

本当にこの色でいいのかと 確認する始末

 

水の中の魚の気分を

常に味わっていたいからだったのか

 

猫になったわたしは

水辺で 魚になった夫を見つけ

きっとまた恋をする

 

夫は水面に映るわたしの姿が

気になって いつも岸辺のあたりを

うろうろ泳ぎまわるかもしれない

 

あまりにも恋しくて

手で つつっ つつっと夫に何度も

触らずにはいられないだろう

 

少しずつ 痛手を負いながらも

魚の夫は 逃げようとはせず

満身創痍になっていくかもしれない

 

わたしが繰り広げる

生まれ変わってからの二人の

恋物語を聞いていた夫は

 

いまも 猫と魚みたいなもんだなぁ

と苦笑い

 

 

 

来羅ゆら  「赤ずきん」

 

女の子だから

赤ずきんは 言いつけをまもらない

赤ずきんは 道草の楽しさを知っている

赤ずきんは 赤いずきんをつけるとみんなが見ることを知っている(可愛いい)

赤ずきんは 人を疑わない そして 人に絶望している

赤ずきんは 本当に怖いのは狼でないことを知っている

赤ずきんは どうしても逃れられないとき

懐深く入り込むことが生き延びるすべだと知っている

赤ずきんは 危険の中にみをさらして生きる

母のようにならないためのけものみち

だから

赤ずきんは

キケンに分け入りキケンを掻き分け

さがしものを さがしている

 

 

 

中西母ねこ  「そらそらそうやん そらそうや」

 

    • そんなもん しらん

 

そらそらそうや そらそうや

いろんなもん あるけど

そんなもん しらん

 

うちのばあちゃん しわないで

つるつるお肌で ええ声してる

むかし 唄 うとててん

のりのりすぎて

あたまのせん きれてしもてん

若いとき むちゃしたらあかん

せん きれるで

 

そらそらそうや そらそうや

 

このごろ たまに スイッチはいる

ピカッと光る 眼の奥に

昔の おもかげ うかんでる

口ぐせは

そんなもん しらん

 

しらんちごて

忘れてるんちがうん

なんねん 生きてきてんねんな

 

そらそらそうや そらそうや

 

 

    • そらええやん

 

そらそらそうや そらそうや

なんでもええやん

そらええやん

 

うちのじいちゃん肺炎に

それでも 煙草やめられへん

おむかえもちかいねんし

尻から煙出るぐらい吸うたらええやん

 

そらそらそうや そらそうや

 

うちのじいちゃん 亭主関白 人見知り

八十もすぎて コンビニで

初めての買い物は ねこのカリカリ

ニタッと笑ろて 自信ありげ

 

なんでもええやん

そらええやん

 

この頃 ばあちゃんのかわりに

洗濯もん干している

後ろ姿がたくましい

 

そらそらそうや そらそうや

 

 

 

阿部由子  「シャンソン歌手」

 

男はよく働いて 大きなビルをいくつも持ちました

世渡り上手だと自分でも信じていました

大きなイヌを三匹 ネコを四匹 オウムを一羽飼っていました

もちろん 家は高塀です

男は世界を旅しました

北海に浮かぶ島国が好きだと思いました

差別と偏見に満ちているからです

差別と偏見を許しているからです

毎日三十分おきに秘書が告げます

サギシさまがおいでになりました

会うのは日に十人と決めていました

サギシが四人 銀行屋が三人

あとの三人はマージャン仲間かビリヤード仲間

カモにするのかされるのか

金になるのかならないか

それが二十年の生活のすべてでした

けれど男は大きな負債を負ってしまいました

百億円を払わなくてはなりません

月に三千万円 年に四億円

それが利子です

手元にあった二十億円の現金は五年で消えました

それから十年がたち

男は五十歳になりました

どういうわけか

今はプロのシャンソン歌手です

客が一人もいなくても居眠りしていても

歌い続けます

なぜならプロなのですから

ありったけの服とネクタイを

かわるがわる舞台衣装にして

甘い声で恋の歌をささやきます

シャンゼリゼ セーヌ川

男と女の秘め事 裏切り 仲直り

大勢いた友だちにも金を目当てに群がってきた知り合いにも

誰一人として声をかけることはありません

物乞いのような気になるからです

酒も今ではバーボンを一杯飲むだけ

ワイン シャンパンは体が受け付けません

けれどどうする?

健康すぎる肉体を持ち

死に際の祭りのために

弾き語ろうとピアノの前に坐ってみましたが

曲がゆがんで声が出ない

けれどどうする?

お金が無くても本がいいよ

リリー・フランキーなんて最高です

心がひろがって現実を蔽ってくれる

モディリアニの裸婦像 ピカソの女人画

それともドガの踊り子

刺激的です

救われるのか救うのか分からない

分からないことが一番です

突き放したような笑いを浮かべながら

心のなかでは大粒の雨が降り止みません

稲妻におびえ雷鳴に追われ

森の闇を逃げまどい

やがて小さな泉のほとりに

たどり着けるのでしょうか?

けれどその願いは叶いそうにありません

マンションの部屋のあちこちに

壁から抜け出せずに

薄茶色の綿毛がいくつも画鋲で止められています

張り付いたままの心を溶かす

和みのときを求めて

 

 

 

田中克幸(KA2)  「陽差し」

 

風がなければ汗ばむ程の

 春の陽差しの中で

こわばった冬の生活から

 抜け出した体は、まだ走れない。

寒さと苛立ちが、暖かさに丸め込まれる。

 

夕暮れにはまだ早い

 心に掛かる人の様に

ぼんやりとした青空に

 刷毛引き雲が浮かぶ。

手を差し伸べて

 抱き寄せる事のできないあなた。

 

苛立ちが、走れない体が、春の日差しの中で。

 

 

 

吉川悦子  「いただきます」

 

新鮮でうまいよ

まけとくよ

 

近江市場で

カニを買った

発泡スチロールに入ったカニは

泡をふいていた

 

列車の網棚に置き

うとうとまどろんでいると

カサコソ カサコソ

小さな音がする

何の音?

 

列車が到着

箱を下す

また カサコソ カサコソ

あ カニがたてる音

 

家でふたをとる

手足を盛んに動かし

カサコソ カサコソ

オレダ オレダ

ゲンキニ イキテルゾ

 

すごいなあ この生命力

じっと見入る・・・・

あかんあかん

これ以上考えたら

 

大きな鍋でカニを茹でる

たちまち真っ赤

「いただきます」

そっと両手をあわせた

 

 

 

おおばやし芳子  「大人のそうだん歌?」

 

1 どうぶつえんに いったなら

  カンガルーの おっちゃんに

  じんせいそうだん してみよう

 

  あいつら ホンマうそつきや

  かちょうは くうきよまんしな

 

  ええがな ええがな きにすんな

 

2 どうぶつえんに いったなら

  カンガルーの おっちゃんに

  じんせいそうだん してみよう

 

  さいごに スキというたけど

  たかちゃん つめたすぎるねん

 

  ええがな ええがな きにすんな

 

3 どうぶつえんに いったなら

  カンガルーの おっちゃんに

  じんせいそうだん してみよう

 

  なさけな ぬけてばっかりで

  ははおや ふまんタラタラや

 

  ええがな ええがな きにすんな

 

4 どうぶつえんに いったなら

  カンガルーの おっちゃんに

  じんせいそうだん してみよう

 

  まじかぁ むずい しゅうかつは

  やらかし ゆるせ めんせつかん

 

  ええがな ええがな きにすんな

 

※ラーメン るすばんもうあきた

 わたしもきいて うさばらし

 

 ええかげん すっきりしたら はよかえり

 あしたはハレる なるようになるわ

 

 

 

内田縁  「ない」

 

ない ないないないない!

なにがないって聞かんといて

ないないないない!

たしかに見たんや

引き出しの中

一段目二段目にもない

ないないないない!

どこいったんやろ

ないないないない!

決めたとこ置いとけって

なんど無くしたらきがすむんって

また地獄の釜の蓋が開いて奈落の底に落とされる

ないないないなー

どこにしもたんやろ

ないないないない!

どこいったんないないないない!

あれ?

古ダンスの三段目の隙間から赤いのなんやろ

あるあるあるあったー

あかい手袋

狐さんに返さなあかん

 

 

 

佐々木豊  「明日がある」

 

明日がある 明日がある 明日があるさ

と 思っていた明日が 今日になってしまった。

 

しまった!

 

赤白詩のボクシング。

 

赤 赤 赤と言えば 

「まっかに燃えた太陽だから

 真夏の海は 恋の季節なの」

美空ひばりの「真赤な太陽」を思い出す。

ひばりさんは一語一語はっきり歌っていた。

赤 赤 赤

「こんにちは赤ちゃんあなたの笑顔

 こんにちは赤ちゃんあなたの泣き声

 そのちいさな手 つぶらな瞳 

 はじめましてわたしがパパよ」

永 六輔 作詞

中村八大 作曲

梓 みちよ 歌

梓みちよの「二人でお酒を」を歌う時の

ポーズが好きだったなあ

 

赤 赤 赤

「ちょこざいな 小僧め 名 名を名乗れ」

「赤胴鈴之助だ」

「剣をとっては日本一に

夢は大きな少年剣士」

そう言えば

ラジオ放送の赤胴鈴之助の番組に

千葉周作の娘役の声をやっていたのは

当時小学生だった吉永百合さん。

 

今度は白

 

白 白 白

「チャン チャン バラバラ

チャン チャンバラリン

白馬童子が飛んで行く

さあ大変だ 大変だ

それ行け 見に行け みんな行け

悪人ばらを けちらすぞ へい

またがる 白馬は 流れ星

白馬童子 白馬童子」

京都府立山城高校出身の山城新伍さん

が白馬童子をやっていたなあ

 

ちょっとちょと

それ 今回の赤白ボクシングの詩じゃないよ

あっ

およびじゃない

およびじゃない

失礼いたしました

 

 

 

左子真由美  「何のために」

 

何のために今日を生きる

疲れた体を横たえもせず

何のために明日を思う

星のない夜空見つめて

何のために探し続ける

闇を照らすかすかな光を

 

愛する人よ

ただあなたに届けるために

希望という見えない虹を

 

何のために作り続ける

いつかは壊れてしまうのに

何のために紡ぎ続ける

誰もみな忘れてしまうのに

何のために歌い続ける

夢は消えてしまったのに

 

愛する人よ

それでもあなたに手渡すために

希望という消えない虹を

 

☆私たちの毎日の営みは何のためだろう、と考えたとき、報われることの少ない日常の営為をまっすぐにかいてみたくなりました。「それでも」という思いです。

 

 

 

にしもとめぐみ  「ウィークエンド」

 

向かいの建物

屋上には鉢植えの花が並ぶ

花や葉が風に揺れて

空を飛行機が滑走していく

 

手を伸ばして

あの風に触れられたら

肉体に詰まる思いが重い

ので ワタシハ 飛べない

 

空は薄紫に暮れていく

明日も同じように

何ごともなく

過ぎて

 

 

「恋歌」

 

空がこんなに青いのも

あなたに続いているから

飛んでくる雀たちの

個体は見分けがつかないけれど

 

あなたはたったひとり

誰かと分かち合うなんて

できない相談で

そう言う時はどうしたらいい

 

蜉蝣さんも

浮舟さんの場合も

その身はひとつ

恋とはまことにおそろしい

 

ホセさんは殺してしまったりするのです

 

 

 

都圭晴  「かんじょう」

 

()

ぽつん、まってる

ぽつん、まってる

 

 

あっというま

はんとうめいのしずく

ひかりをとじこめ

まとっておぼれる

 

 

ぽつん、すった

ぽつん、はいた

 

 

ひらいてさいた

であいはひろがる

かさなってかさねる

ひらいてとじて

 

 

ぽつん、しずむ

ぽつん、しずむ

 

 

うみからのうみ

みなもはゆれた

なみはこきゅう

とおくをさらった

 

 

ぽつん、あそんだ

ぽつん、あそんだ

 

 

もう てにした

まだ しらない

ずっとながめた

つながるこきゅう

 

()

まあるい、きょくせん

まあるい、きゅうたい

 

 

ゆっくりふれて

つつんでつつまれ

おもいはまざり

かんじょうながれる

 

 

なみは、せまって

なみは、こえてく

 

 

ゆるしてほどかれ

からだはみちてく

あたまはしってる

ことばはいらない

 

 

ひとは、うまれる

ひとは、かわれる

 

 

なんだろう ぼくも

いっぱいわすれて

なんどでもおもいだす

こんにちは ありがとう

 

 

ひなた、ぼっこ

ひなた、ぼっこ

 

 

こころであるからだ

からだであるこころ

こころ からだ ぼく

まいにちは いきをする

 

()

そらがつばさを

ひろげている

たゆたうくもは

せんりつをむすぶ

とうめいなときが

いろづいていく

あかね ぐんじょう くろ

ゆめへとかえる

 

あさがひろっていく

 

 

 

宮崎陽子  「騒がしい蝉」

 

ジジィ― ジジィー ジジィー ジジィー

ジジィー ジジィー ジジィー ジジィー

兄がよぶ

 

ジジィー ジジィー ジジィー ジジィー

ジジィー ジジィー ジジィー ジジィー

弟がよぶ

 

ジジィー ジジィー ジジィー ジジィー

ジジィー ジジィー ジジィー ジジィー

姉がよぶ

 

ジジィー ジジィー

ジジィー ジジィー

ジジィー ジジィー

 

ひょっこり

じじいが顔を出す

けんかしてるんかあ

 

 

 

北口汀子  「藤」

 

藤は藤色と

 思っていた私に

藤を教えてくれたのは

 あなた

藤の花房に埋もれながら

 藤は何色? と

 問う私に

藤は藤色ではないよ と

 くちづける

 貴方のくちびるから

藤の花びらが

 こぼれ落ち

藤の花びらを

 受けとめようとする

私の手の平は

無心に

貴方の背中を

なぐさめている

 

 

  「牡丹」

 

    その夜

古へ人なる 六条御息所の胸に

 抱かれし 嘆きは

  何処よりとも知れず

   しめやかに忍び寄る

 

    その夜

回廊を渡る 修業僧の列は

 漆黒の闇に 若きおもざしを

  たまゆらに浮かべては

   消えていく

 

    ポツッ と

牡丹の蕾が割れ

  ゆるゆると

牡丹は咲き至る

  ゆるゆると

   咲き至りては

  何処よりとも知れず

   露が宿る

重たげに花をゆさぶりては

色の香りをあたりに散らし……

 又 どこやらで

    ポツッ と

牡丹の蕾が割れ

  ゆるゆると

牡丹は咲き至る

   又 ポツッ と

 又 ポツッ と

 

やがて東の峰より

  昇りたる 月は

 夜の底で咲き極めようと

 花をゆさぶる牡丹が愛おしく

細きうなじを なおうすく

  宙空に

 輝かせて 眠る

 

闇は さやさやと

 花びらから ふりおとされ

  真赤に咲き至りし

 牡丹でひしめく

ふしぎな庭は

 夢めく光を 放ち初める

 

 

 

 

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