関西詩人協会15周年記念・イベント

朗読と詩の未来

 楽しみましょう!詩の明日
                                         日時:2009年9月27日
                                         場所:京都健康保険組合保養所「きよみず」(ホテルグラン京都清水) 

 

総合司会:北村真・北原千代
上記の場所にて行われたイベントは総勢64名の参加を持って、盛会裏に終了した。そのあらましを紹介しておきます。

第一部
開会の挨拶  横田英子
 代表の杉山平一氏の代わりに、15周年を喜び「詩の未来であると共に会員の皆さんの未来でもある」と祝福の言葉があった。

おはなし「詩の未来」   有馬敲
 講演と依頼されたけれど、自分としては『おはなし』とした方がやりやすいという前置きから始まった。フランス近代詩を取り入れる以前、俳諧の時代からすでに日本には芭蕉などの試みがあった。新しい文学の評論家として清水良典氏を挙げて、戦後の吉本隆明、花田清輝に続くと紹介された。
  別紙にお話の内容は入れていますので、こちらからどうぞ。
第二部
ティータイム・ギターコンサート  平島謙二

曲目:「さくら変奏曲」「風の丘(魔女の宅急便)」「アルハンブラの思い出」「11月のある日」「大きな古時計」
 懐かしい曲をたくさん弾いて戴いて、私たちの情感は彼の指先に翻弄され、うっとり聴いていた。
アンコールに応えて「影を慕いて」を演奏された。
第三部
詩の朗読の集い
奥村和子「石上露子のうた 三題」
石上露子(1882〜1959)
大阪南河内・富田林の大地主の跡取り娘として生まれる。与謝野鉄幹の『明星』に短歌や詩、掌編小説や随想を執筆。相愛の人との恋を諦め婿をとり、地主として生きる。作品には、閉塞された時代への悲痛な思いが投影している。

★みいくさに こよひ誰(た)が死ぬ さびしみと 髪ふく風の 行方見まもる(日露戦争を歌う
★黒髪に 夢のからなるわれ掩ひ 柩のくるま 人の送る日 (結婚前夜の歌)
★わが涙玉とし貫きて喪にかざり さかしき道へ咀われて行く(結婚前夜の歌)

これらの歌に絡まりながらの奥村和子さん自身の詩の展開でした。
中尾彰秀「夏祭り」「きとうかきいとるか」

朗読の始まりに、いきなり演台の横っ腹を叩く。
ドンドコドンドコ・・・・
夏祭りの太鼓の音に驚かされた。

ともあれ今宵は/太古が/太陽にこってりと焼かれ/鮮やかな黒光りして/真夏を踊るのだから/

こうやって文字面を辿っても届かない所に、朗読はあった。
平岡けいこ「REM」「傷」

REM
レム睡眠中の脳活動は覚醒時と似ており、急速眼球運動だけが起こるのは、目筋以外を制御する運動ニューロンの働きが抑制されているためである。
/無意識に縛られている/作為の予感/皮膚は内蔵のためにあるのか/血管や筋肉は収まりたがっている/

言葉では分かりにくいけれど、皮膚に直接しみ入るような朗読。そのあと、英語での朗読もされた。
竹野政哉「死、売ります」

苛烈な生を持ち歩いているという自覚のない現代人への死?(詩?)を売っている若い詩人の警告。
/棄てられますと、処理のために/あなたの苛烈な、生、より多くの/苛烈な、生、が失われるおそれがあります/

「死ぬな!」
「殺すな!」

近藤摩耶「ほうじ茶の茶色は煎茶色ではない」「橋とさるすべり」

「茶」という文字で囲いを作った詩がこのような読み方をされるのかという、朗読の妙味というものが感じられた。
堂々としていて、緩急自在。言葉が目の前に映像となる。しかし、この題の意味するものは何だろう。
貴方はほうじ茶が好き?煎茶が好き?
ギターが「茶」という単語を追いかけている。

大倉 元「俺」

最初は普通に朗読。後ろをむいてゴソゴソしていると思ったら。人形が出てきた。
「ゲンチャン」というお人形。腹話術による掛け合い朗読。

元:昨日出来なかった事が/今日出来るゲンチャン
ゲンチャン:昨日出来た事が/今日出来ないオッチャン
元:キリンの首は長い
ゲンチャン:ウサギの耳も長い
元:ゾウの鼻も長い
ゲンチャン:オッチャンの気は短い
元:ゲンチャンは犬や猫と上手に話する
ゲンチャン:オッチャンは人との会話は下手

ほのぼのと聴かせる。オマケはハンカチの手品。
横田英子「真夏の雉」「桜の道」

真夏の雉は学校の教師をしていたころの生き生きとした絵を描く子どもたちを言葉と声で描写してみせる。
/センセイ ぼく 描き直す/低空飛行 凄いよ/
/小屋を逃げ出した雉を追って/運動場を駈けた子どもたち/校長先生がひらひらさせていた/あおいかすみ網だったか/その集団の先頭を/何羽も何羽ものオスの雉が/低空飛行していく/

「桜の道」は亡くなられたお母さんの葬送の詩で、ギターが憂愁の曲を奏でる。
/僅かな花も/風もないのに 揺れて/もう母のいない道に/立っているのです/
津坂治男「たこおどり」

津坂さんの朗読は何回か聴いた事があるけれど、今回の「たこおどり」は出色だった。文字で読んでみるより、やはりこれは朗読だよねという感じ。ギターも剽軽に追いかけて。

/そんな具合に 雨にも風にも/ドラッグの誘惑にも負けずに/もっぱら第三のビールとやらで/生き抜く 津坂治男と(ここで胸ドンと)、ニホントカゲと、カナヘビと/リュウノヒゲ、ハチ、その他もろもろ/

そして最後はタコ踊り。(DVDに収めていますよ)

飛び入り朗読

井上哲士 シャンソン「恋心」

皆さんご存じのシャンソン「恋心」を素敵な響きのある声で。

下の方にある小さなUや▲ボタンを押すと止めたり再開できます。




紀ノ国屋 千「風の物語」

京都在住ということで、参加された。若い頃に作られた詩とか言われて、扇子の内側に多分詩が書いてあり、それを読んでおられるのだろうが、堂々としていた。
作務衣がとても似合っていましたよ。

/人はどうしようもなくなった時/空を見上げる/空は目に飛び込んできて/体中に溜まった/悲しみを/すぅーと吸いとってくれる/

/それが青い空なら/生きているんだなぁー と/つくづく思う/母さんに似た声が聞こえる/

人はどうしようもなくなった時/空を見る/青い空の下を/風のボヘミアンが旅行く日/また小さな物語が聞える/

呉屋比呂史「サンタさんのかわりです」

幼稚園の大イベント「クリスマス」に郵便配達人であるボクは巻き込まれる。しかしこういう対処があったのかと、目からウロコ。

/「ぼくはサンタさんではありません/郵便屋さんです」/「赤いクルマに乗って/青い制服み赤いマークを着けてやってきました」/「でもきょうはクリスマス・イブで/サンタさんのかわりです/サンタさんは遠い北の国に住んでいるので/みなさんへのプレゼントを預かってきました/これからお渡しします」/

子ども達の夢を壊さず、配達人であるボクもウソをつかず。

ごしまたま「エコ夏週間」

家の中や外での世間様がなくなり、視線を気にしていない人類。
裸はエコなのか、外でのK君のはだかは逮捕されてしまったね。

誰も見ていないと思っても、プチトマトが赤い顔して見ているよ。
野川ありき「八人家族」「ことば」

はっきり通る声。幼いころの子ども5人といとこ夫婦の両親と、大酒呑みのお爺さんとの貧しい暮らしを回顧して、やはり愛が溢れていたのだと確信させる声調だった。

/戦争を忘れたいと/生きて行くことが嬉しいと/皆が思っていた頃/ポンプで井戸の水を汲みあげて髪の毛ぇや顔を洗っていた/あの水は なんであんなに甘かったんやろ/

関東弁は標準語よりクールで、ようすれちごうて・・・・・
雪の国に迎えられ、ほっこりしたのですね。


閉会の挨拶 橋爪さち子

文責(HP担当:永井ますみ)

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