『兵庫讃歌』冨田砕花作詞  
   ーいつかきた道への回帰と
     五弁の花のファンタジアー 
 (朗読・香山雅代)


(序章/丹波但馬篇/摂津・播磨・淡路篇T/摂津・播磨・淡路篇U)省略

終章


深々と刻まれた傷あとを見せる大地の歴程。
青山を一瞬に枯山と変えた無道の妖術、
その減点への身の程知らずに挑んだ愚な試行錯誤の数々の苦い噛み返し
逃げかくれようもない時の推し移りではあったが、
強靱で、素直な、忍従の人々がその場合その場合を生き抜き、
しずかに、ゆっくりと、生得の賦性の諧和と協調を取戻して
来る日も、来る日も、黙々とくらしの歩みをはこびつづけた。
心ゆたかに、頑でない野鄙を肌身につけて。

はるかな虚空にむかって奔り騰がる寒流を塞ぎ、
美しい弧状列島誕生の謎をつつみかくし、
すがたを人に見せることをせず、さりげなく深海の底に眠る大和堆。
はてしなくひろがる霧氷の大森林、ブリザードの凍原。
その秘密を足がかりにてこでも退かない宿命の映像の動機。
黒潮の粘性流体の抹消の波頭に裾を浸す永久平和の彫像の幻。
その絶望と疲労を知らぬ肉付けの作業。
帰巣本能のさりげない示唆。
しっかりと繁栄の未来図を先取りすることを忘れない長尺フィルムのための造影。
幾万年も光る海峡を洗って満干した潮汐、回帰潮、
湧き昇る流れの哮けり、叫び、潮憩の貼付け絵を
ぐいと踏まえてまぶたに描く虹の花綵。
風よ、
光よ、
空よ、
雲よ、
水よ、
   心象の海、川、山、木、草、
風物は絶えずしのび寄り翳りをはらい除け、
挫折と破砕を凌いだ現実。
かぎりなく澄み晴れた青空の果敢な奪い還えしの死闘。
きょうの明るいすがたは屈従と折伏を越えたものへの
つけ加えも、上積みもされる気づかいのない大きな贈りもの。
生れのさとへの国ぼめうたは、
約束の明日を待たずとも
すでに朗々と、高らかにうたい上げられる。

           (反歌 一・二)省略
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