関西詩人協会創立10周年記念

第三回『詩で遊ぼう会』 in大津  <音との戯れ>



  
        日時
: 2004年10月3日(日曜日)午後1時〜4時30分(開場:12時30分)
        場所大津市伝統芸能会館 (能舞台を利用しての活動)
   
                          主催;関西詩人協会
                          後援;大阪音楽大学 大阪音楽大学同窓会≪幸楽会≫ 

プログラム
挨拶:関西詩人協会 外村文象


第一部 

「私の神戸」 フルートのための 
                詩・朗読;岡本真穂 曲;脇山幹士


震災後、神戸は今年10年を迎えます
その日へ向けての餞のことば。フルートの剽軽なジャズの音を懐かしみ。

ウインドウにうつる私の顔
少し年を重ねたわね。


私達は年を重ねながら、愛しいものを増やしていくのでしょうね。

「遠い日の食卓」 クラリネット、打楽器のための  
                 詩・朗読;真田かずこ 曲;脇山幹士


打楽器の音に合わせて舞台を歩くスマートなひと
ふぐごはん、わかめごはん、たけのこごはん、豆ごはん、イカめし、さざえごはん、あわびごはん、くりごはん、牡蠣ごはんの、いずれも愛の手が掛かった、涎の出そうな食事ができる幸せ。いつまでも続きますように。

「招待状」 フルート、クラリネット、打楽器のための 
                  詩・朗読;北原千代 曲;岡田文子


この詩は昨年の「白鳥省吾賞・優秀賞」受賞作品(少し変えてあるようですが)です。
くにゆぐにゅとしたクラリネットの音がまるで土をこねる音か風の回る音のように聞こえました。
練習の時は声がまるで入らなかったので案じましたが、見事に作品になっていました。
主題は田舎と都市の融合のようでした。夕餉の支度をしているからきて下さいという若い(と思われる)男性からの招待状なら私も受け取ってみたい。
尤も、尖った美しい靴は履けないからむりかなぁ。

写真がないのだ 「秋の花会」 フルート、打楽器のための 
                    詩・朗読;園田恵美子 曲;渡邉さとみ
花が咲くというリフレーンがトライアングルや鐘と一緒に鳴らされると不思議な気分。
私の行きたい
場所に
私は行ける

本当にそんな気になってくるから不思議

「サラマンダー」 バスクラリネット、打楽器、チェロのための 
                   詩・朗読;薬師川虹一 曲;岡田文子

これは凄いですよ。半文語的な言葉遣い「おお」とか「来たりて」という大仰な言葉が打楽器の響きの脅威に立ち向かっている。
立ち向かっているのはサラマンダーか、迎え撃つ薬師川氏か。
因みにサラマンダーというのはと、勝手にリンクしました。サバイバル映画のようです。


「好ましい時代」―クラリネット、ヴァイオリンのための
  詩;神田好能 曲;脇山幹士 歌:荻原次巳(バリトン)

難しい。
言葉としては全然難しくないのだけれど・・・・。
親の愛さえあれば いい
親が子を裏切らなければ良い

台詞になるべきか、オペラ風というのか。
楽器が歌を助けるということがよく分かるシーンだった。

第二部

「涙乾く日」―ソプラノ、クラリネット、チェロのための
           詩;富岡みち 曲;熊谷美紀

なのに男は どうしてはらから(同胞)を
傷つけることを止めないのか


ピンクの歌姫の静かな凛とした響き。
クラリネットとチェロがしみじみと語る。

「岡山県那岐郡山麓の大銀杏」 マリンバのための  
           詩・朗読;名古きよえ 曲;熊谷美紀

大銀杏に擬した法然上人の来歴へ迫る切々とした語り。マリンバだけが後を慕って就いていく。
南無阿弥陀仏
君がここで知るのは、地球の喜びなのだ。
夜は 眠るだろうか
昼は 昼は歌うだろうか
若葉のとき 紅葉のとき
空に帰った命を 讃えているだろうか

「ぶるーはみんぐ」  フルートのための  
        詩・朗読;大西宏典 曲;渡邉さとみ


フルートがやさしく伴奏する
ぶるーはみんぐ
ねむりも
ぼくのくちびるも
さかなになった 二人のあいも


ぶるーは水か、魚になった二人の愛もブルーに溶ける

「ショパンの墓前で」 チェロのための  
              詩・朗読;安森ソノ子 曲;脇山幹士
ショパンとドラクロアの友情を安森氏流の情熱的な朗読。
チェロの旋律は時とするとショパンの歌に流れ、同じ表現者としての道があることを啓示する。
喀血をくり返しながら なお作曲を自己に課した魂に
後世の道で 私は改めて誓っている。

「二〇〇四年 七夕」 フルート、クラリネット、チェロのための  
                     詩・朗読;司 茜 曲;冨田万理子

甲高いフルートと高めのクラリネットで、時に七夕のメロディを入れて切々とした朗読でした。
きょねんの七夕さまに
お母さんの富貴恵さんが笹に結んだ歌は 
ひたすらに早く帰れと祈りたる 願いよ届け天の星空
今夜の歌は 
ひたすらな願い叶いて感謝の気 親子で仰ぐ故郷の夜空

「ヒョットコ」 フルート、チェロのための  
                    詩・朗読;村田辰夫 曲;熊谷美紀

出だしはドンと床を踏んで・・・ひょっとこのおかしくて悲しいサガを擬音で表わす。
そこは過去の情欲や野心が宿っていたところ
ヒョットコはそこに向かって 息をふく

ヒョットコは 最後の日まで 息を吹く
ピィというまで 息を吹く


そこで、フルートのピイィーッ

「揺らぎ」―バスクラリネット、ヴァイオリン、チェロのための 
           詩;中岡淳一 曲;岡田文子 歌:荻原次巳(バリトン)

住宅の構造学を詩にしたという印象だった。
歌の面白さ、
ゼロ イチ セロ ゼロ ゼロ イチ セロ ゼロ
未だ固い土になれない地霊の
嘆きはつのるばかり


                      休憩

「魂の旋律」 (中尾彰秀:キーボード即興曲)

「はなのえまい」 
         詩と朗読:白川淑  即興伴奏ハーモニカ;中尾彰秀


巻紙に書かれた詩をあでやかに読まれ風情のあるものであったが、伴奏のハーモニカの音が大きすぎた感があった。ハーモニカにマイクをくっつけない方が柔らかな音になったのじゃないかとヨソながら思った。
他に
「妖しのあやめ」(白川淑・女性合唱曲)

「春の掌」   (香山雅代・合唱曲)

をバックに聴きながら

『一行連詩』(参加者全員の即興作詩)

入場者参加です、資料がないので公開できませんが。

第三部



「蔓草」―フルート、クラリネット、チェロのための  
        詩;福田万里子 曲;楠井淳子 歌:坂口さやか(ソプラノ)

おまえは存在?
それとも非在?

フルートとクラリネットの不安な音
ひたむきに延びながら
支えている
崩壊を!
  ソプラノはかすかに消えて

「あおいとり」 クラリネット、ヴァイオリン、チェロのための 
             詩・朗読;永井ますみ 曲;熊谷美紀

自分でいうのもナンだけれど、曲が絶妙で気に入っています。
チェロの音が鳥の羽のように優しく、チチチチと鳴るバイオリン
中間のメロディも語りのようでした。
音を聞き直してみるともう少し声が大きくても良かったかなと反省。
てをつなぐことはできないけれど 
はねをやさしく交わし とんでいくわ あたしたち

「帷子川」 フルート、打楽器、ヴァイオリンのための 
                  詩・朗読;五島多麻 曲;岡田文子


アザラシのタマちゃんと、できちゃった結婚をしたかったボクの物語二つを
オーバーラップさせる詩だが、朗読にはちょっと難しかったのではないかと思った。
打楽器が拍子をとり、フルートバイオリンが目立たないように支えてくれていた。

「かゆ」 クラリネット、ヴァイオリン 
            詩・朗読;ますおかやよい 曲;熊谷美紀
昭和20年16歳の感動の思い出、友の思いやり。
眼がさめると 痛みはおさまり
急に明るくバイオリンが誘う。
白い しろい 真っ白 
丼とのさかいめが 判らぬくらい 白いかゆ

「淡海の月」 チェロのための  
                 詩・朗読;下村和子 曲;楠井淳子


張りのある声が彼女の世界へ誘う
チェロが遠慮がちに繋ぐ

身体という舟に乗ったわたし
容器は濡れてやがて朽ちても
わたしは多分 いつまでも此処にいる

「叙情の風を拒絶して」―フルート、クラリネット、チェロのための  
        詩;佐古祐二 曲;渡邉さとみ 歌:坂口さやか(ソプラノ)

命を常に見つめざるを得ない作者の絶唱を歌姫が代って歌う。

濡れた葉尖から
ゆっくりと離れた点滴が
一瞬に舞い そして落ちる
  


閉会の挨拶

関西詩人協会事務局長:金堀則夫

詩楽という事を考えました。詩学の時は詩が苦ですが、詩は楽しくしたいものです。
11月14日には総会があります、お客さまに伊藤桂一さんをお招きしています皆さんいらしてください。


演奏者プロフィール




バリトン;萩原次己

京都市立芸術大学大学院修了。第67回日本音楽コンクール声楽部門(歌曲)第3位。現在、神戸市混声合唱団、ザ・カレッジ・オペラハウス合唱に所属、関西二期会正会員。
ソプラノ;坂口さやか

大阪音楽大学大学院修了。第6回日本の歌コンクール歌曲部門銀賞。現在、宝塚音楽学校講師、日本シューベルト協会会員
クラリネット;鈴木祐子

大阪音楽大学卒業。第3回日本クラリネットコンクール入賞。第4回宝塚ベガ音楽コンクール木管部門第1位特別賞受賞。現在、大阪音楽大学講師、京都市交響楽団団員。
打楽器;畑中明香

滋賀県立石山高等学校音楽科を経て、同志社女子大学音楽科卒業、独国立カールスルーエ音楽大学卒業。打楽器協会新人演奏会グランプリ。朝日現代音楽コンクール「競楽W」第2位。独ダルムシュタット音楽祭にてシュティペンディム賞を受賞。
チェロ;左納実子

京都市立芸術大学卒業。ハンガリー・リスト音楽院に留学。帰国後ソロリサイタルを開催。現在、KYOTO弦楽四重奏団のメンバーとして、ベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲演奏に取り組んでいる。
ヴァイオリン;福富博文

京都市立芸術大学卒業。ソロ、室内楽、新作などで活躍。現在神戸市フィルハーモニックソロコンサートマスター。奈良県立高円高等学校音楽科講師。

フルート;待永 望 


大阪音楽大学卒業、同専攻科修了。西独マンハイム国立音楽大学卒業。1979年芸術家資格試験に最高点で合格。シュヴェツィンゲン音楽祭参加、南西ドイツ放送室内管弦楽団との共演などの活動後帰国。演奏活動の他、コンクールの審査員、講習会等で活躍。現在、大阪芸術大学助教授、大阪音楽大学講師。


作曲家プロフィール

岡田文子(おかだ・あやこ)
大阪音楽大学大学院修了。第3回ラディスラフ・クービック国際作曲コンクール(米)等入賞多数。現在、大阪音楽大学講師、作曲家集団Se会員。
楠井淳子(くすい・じゅんこ)
大阪音楽大学大学院修了。名古屋文化振興賞佳作入選、現音作曲新人賞入選、東京国際室内楽作曲コンクール第3位。現在、大阪音楽大学、同付属音楽院講師。


熊谷美紀(くまがい・みき)
京都市立芸術大学大学院修了。大学卒業時、音楽学部賞受賞。現在、大阪音楽大学、同付属音楽院各講師、深新会関西、川西音楽家協会各会員。

冨田万理子(とみた・まりこ
大阪音楽大学卒業、同専攻科修了。現在、松蔭女子学院中学校・高等学校非常勤講師、加古川市文化振興公社理事。MUSIC OFFICE MARIKO代表、作曲家集団Se会員。
脇山幹士(わきやま・かんじ)
大阪音楽大学大学院修了。第3回吹田音楽コンクール入賞。現在、大阪音楽大学、梅花女子大学、宝塚音楽学校各講師、日本作曲家協議会、作曲家集団Se会員。
渡邉さとみ(わたなべ・さとみ)
大阪音楽大学大学院修了。第1回吹田音楽コンクール優秀賞受賞。現在、大阪音楽大学、同付属音楽院各講師、作曲家集団Se会員。


終了後「懇親の会」 (自由参加・会費:3000円)(当日受付で申し込み)があった
           協会会員外の方のご参加歓迎
    会場:琵琶湖畔の「びわ湖大津館」(旧びわこホテル)
        終了直後、会場から送迎バスで移動します
二次会は琵琶湖の涼やかな風に吹かれながら、ビールで緊張の糸をほぐしました。
作曲の方々もお見えになって(おつまみがなくなっていましたか>スミマセン)和やかな楽しいひとときを持つことができました。委員の方々に感謝感謝です。
(HP作成・レポート共 :永井ますみ)




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