関西詩人協会主催 和歌山現代詩協会共催 2003年9月7日 和歌浦・バグースにて |
9月7日は残暑が激しく行き着くまでがへとへとだった。これは私の持っているビデオの脚が、主な原因でもあろうか。「旅館 木村屋」は歴史のありそうな旅館で、少し早く着いたので、上がらせてもらって待っていた。扇風機は回っていたが暑い!のひとこと。 開始時間の3時になってやっと場所を教えてもらう。案内の矢印もそれから作られ、まさにドロナワ。 案内されたところは、一般の方も利用している浜辺の、海の家っぽいところ。 更に進むと、アジアンテイストの薄暗い洞窟のような、小さな空間があった。舞台は少し高くなっていて、マイクと照明があたっている。 |
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今回の詩で遊ぼう会は「海」をテーマにした詩を、参加者がそれぞれに書いてきて、それを読みながら、詩のキャッチボールをする。 単なることば遊びに終わらせたくないというのが、担当者の考えだったようだ。・・・・・・が。 |
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参加者は約20名くらいであろうか。 最初は南村長治さん。 先回の関西詩人協会委員をしておられたが、今回は体調不良とか。 でも流石に和歌山であれば、じっとして居れなくて・・・? 「暫時(ざんじ)」という詩を読まれる。 わたしだって煤けた火球を後生に抱えて 75年も息をしている そろそろ 人口涙液をさす時間だよ ・ ・ ・ 「人口唾液だってあるよ」と思いながら聞いていた。 侍が使うような古くさい死語を使って詩語とする・・・・・・・。心意気。 |
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神田さよさんは「おいしい塩」 ちょっとだけ色っぽい。 |
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朗読されたのは、詩集『海へ抒情』から「海のエスキス」 すべての行き着くところは 河と海が接合するところの 苦みと かすかな温かさが混合するように 互いの肉体を 愛撫しあう行為が待っていることを ・ ・ 青春のエスキスは何枚も破り捨てられ 海溝深く投げ込まれる ・ ・ |
原 圭治さんは和歌山大学を出られて、和歌山にはとても馴染みが深いとか。会が終了してから「和歌山ラーメン」を御一緒した。 ちょっと辛めの腰のしっかりした麺が売り物らしい。 |
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安森ソノ子さんは 先ず鶴見俊輔氏の詩集『もうろくの春』の出版会が京都で9月28日に行われるという宣伝。 安森さんはこの会の司会進行を受け持たれるとのこと。 あちこちで読んでおられるというだけに、ゆとりを感じさせる朗読だった。 |
「海亀の産卵」 海を泳いで来たずっしりとした体 甲羅の長さ八〜九センチ 幅七十センチを支える短い足で ひたすら歩き 「この場所で!」と選んだ位置で止め 海の方へ体の後を向け 穴を掘り始めた 砂浜での産屋を ただ一人で造るために 主に後ろ足で砂を掘り もくもくと砂をかき出し 産卵の呼吸を整えた ・ ・ |
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山田ひろしさんは和歌山詩人協会の方で 昭和19年、輸送船えんれき丸の惨憺たる戦歴について右のような舟の平面模型を元に話された。 朗読されたというのが正しいのか。 これは山田氏の手持ち芸になっているようだった。 えんれき丸は18×120b6800dの輸送船だ 定員は500名のところ2500名を乗せて、昭和19年10月12日門司を出航。台風により座礁して玉野で修理。10月19日再度シンガポールへ向かったが・・・・・・・・・ |
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乾武俊さんは 右の詩を読まれ、抒情に流れない他の詩もと、また最近は短歌を詩として発表している。発言も芝居もまた詩だ、と。 同じ場所、即ちバグースの浜で 2003年10月5日(日曜日)に海辺劇『餓鬼阿弥の道』を脚本・演出なさるという。 お天気が良い夕方の浜でとは・・・・・和歌山には、良い場所があるものだ。と羨ましい私。 |
1948年に発表されたという詩「山間療養所」他を読まれた きのうまで、落葉の音があんなにあわただしかったのに、ひとばんのあいだに、梢らはもうからつぽのようにあかるくなっている。風のないここの谷間に、うしなわれたもののかおりがのぼり、しじまがえがくひだまりのなかに、もはやこときれて動かない、白いけだものの姿があった。 病むものはひとりではない。それは無心の少女にも……。少女の声は日々にしわがれ、だから、少女は、だまってゆっくりと髪のりぼんを結びなおした。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ |
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真夏の海へ ますおか やよい ウワァー 松林の中から 水着に着替えた子供たちが走り出てきた 海に向かって砂浜を一目散 アツーイ 小さな子供は思わず浮き袋を落としその上に立つ 泣きたいのをぐっとこらえ 兄ちゃんたちの後を追う ・ ・ ・ |
増岡やよいさんは大阪在住だが 和歌山出身とか |
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岡崎葉さんは最近売り出されたCDの中から「方男波」を前奏曲に「海に沈む夕陽を待つ時」を朗読された。 |
海に沈む夕陽を待つ間 岡崎 葉 ・ ・ ・ 誰もが沈黙して 「もうすぐね」と待っている 不思議な時間 やがて 島の上まで 降りてきた橙色の太陽が火になり しだいに燃え尽きて 欠けながら海に沈んでゆく ・ ・ |
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・ ・ 何故?まだたった六十年も経っていないのに また 同じ歩みを始めたの? 俺たちを 本当に 犬死にさせようというのか! 世界に誇るべき 平和憲法は どこへ行ったの? シャレコウベの 穴に 溜まっているのは 雨水なの? それとも 涙? |
城久道さんは協催頂いた和歌山現代詩協会代表の方です。 「渚のシャレコウベ」を朗読。 |
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佐古祐二さんは 関西詩人協会の委員です。 読まれたのは「冬の海」 |
冬の海 荒荒しく吼える海 もうじき冬がやってくる きりりとしまった冬が それは毎年やってくるのに なぜか いつも新しい冬だ 乳房のように盛りあがり 瀑布のように崩落する 波涛のしぶきの中 孤独な熱情のように ・ ・ |
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うちあげられた海藻と 生ごみの混じりあう臭い 波しぶき 足の裏から ごっそり逃げていく砂地の たよりなさに 大地の裏切りを 感じ取った日 ・ ・ 私が海のものか山のものか まだまだわかりはしないけれど 朝もやに目を細め 風を読みとると ・ ・ |
和歌山詩人協会の会員水沢 碧さんは「潮騒」を朗読。 詩の内容も定型でなくこれからの思索が期待できる。 |
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今回の世話人中尾彰秀さんは 「いつしか」他数編を朗読した。 |
いつしか 中尾彰秀 うろこびかりする ひとつの水を目撃し 海と言う 逆光の 厳しい段差を 一気に 駆け上がってきた 色黒の青年は漁師 おもむろに 背ビレ折りたたみ ・ ・ ・ |
やっと鎮まりはじめた熱気を感じながら「バグース」の浜でビールジョッキを傾ける。これが最高だね。
和歌の浦の、打ち寄せる渚の音に耳を傾けながら、和歌山の人たちとお喋りをする愉しみ。
これがあるから、来て良かったとほっとする。と言ったら単なる呑んべえということかな。(永井・記)